ビジネス書の分野では、自己啓発書ブームが起きています。自己啓発とは先人の教えをもとに、自身の思考や能力を高めることです。また、自己啓発書を読む人の目的は人によってさまざま。仕事の成果をあげたい、仕事の人脈を構築したい、キャリアアップを目指したい、異分野への挑戦などがあげられるでしょう。

fcscafeine/iStock

誰もが知ってる代表作

では、なぜ自己啓発が持てはやされるのでしょうか。コロナ以降、私たちの生活は大きく変化しました。リモートワークという新たなスタイルが確立し、社会の変化に対応するために自身の能力・知識を刷新する必要にかられています。さらには、会社に依存しない知識やスキルへの欲求が高まっているのでしょう。

ヒット本としてまず、思い出されるのが「嫌われる勇気」「幸せになる勇気」(ダイヤモンド社)の2冊ではないかと思います。世界40カ国以上で翻訳され、日本と中国でのダブルミリオンセラーを記録しています。アドラー心理学の「なぜ不安という感情をつくり出すのか」という問いが、読者に共感を呼び起こしたのです。

日本人は「自分はこうありたい」という見え方よりも、「他人にどのように見られているか」を気にします。嫌われないための行動規範が最優先にインプットされているためです。自分への向き合い方や、これからの生き方を考えるうえで、見え方を必要以上に気にすることに違和感を覚えていた人が多かったのでしょう。

「嫌われる勇気」は読みやすく構成されています。「どうすべきか」に主眼を置くアドラー心理学が、日本人に適合していたことを証明したのです。また、会社に勤める人が今後のキャリアを充実させるためには自分を切磋琢磨し、市場価値を高める以外にはありません。その時、嫌われる勇気の実践が必要不可欠なのです。