ロシア軍が2022年2月、ウクライナに軍事侵攻し、これまで多くのウクライナ人が殺害され、女性たちは暴行を受け、子供たちが拉致されてきた。ハーグの国際刑事裁判所(ICC)はロシアのプーチン大統領ら指導者を戦争犯罪人と指定、逮捕状を発布した。そのようなロシア側とウクライナの「和平交渉」ができるだろうか。ゼレンスキー大統領は「平和の公式」を発表したが、和平交渉の大前提はロシア軍占領地の返還、ウクライナの主権回復だが、ロシア側は絶対受け入れないだろう。それではウクライナかロシアのどちらかが完全に消耗しきるまで戦い続けるしかないのだろうか(「ゼレンスキー氏の愛する『平和の公式』」2023年12月15日参考)。

クロアチア系住民とボスニア系住民間を結ぶ「スタリ・モスト橋」(2005年11月、ボスニアのモスタル市で撮影)

クロアチア系住民とボスニア系住民間を結ぶ「スタリ・モスト橋」(2005年11月、ボスニアのモスタル市で撮影)

ウクライナのクレバ外相は24日、中国を初めて訪問し、王毅外相と広東省広州市で会談した。ウクライナ外務省によると、クレバ氏は「ロシアが誠意を持って交渉に入る用意ができたならば、ロシアと交渉する用意はある」と述べた。一方、ウクライナとロシア間の調停に乗り出してきた中国の王氏はウクライナ侵攻の政治的解決の重要性を訴えたという。ちなみに、中国が2023年2月24日、ロシアとウクライナ両国に対して12項目から成る和平案を提示した。その内容はロシア側の主張を支持し、ウクライナ領土の分割を容認している(「中国発『ウクライナ和平案』12項目」2023年2月25日参考)。

クレバ外相が中国まで飛び、王外相と会談したと聞いた時、ウクライナ側に「和平交渉の可能性をなんとか見出したい」といった焦燥感が出てきているのではないか、と感じた。ウクライナ側は中国の立場を知っている。北京側から12項目の和平案を再度聞くためにクレバ外相が中国に飛んだのではない。クレバ外相の訪中はウクライナの必死の試行錯誤というべきだろう。