ここカナダでは韓国車が歴史的に強みを見せています。韓国の自動車産業が黎明期の頃である80年代初頭からカナダ市場では強みがありました。当時の韓国車はボロでしたが、価格が日本車よりはるかに安かったことで市場浸透したのです。日本車は性能的に凄いとは思いますが、市場は必ずしも「凄い」車だけを求めているわけではないのです。特にどの車も似てくると個人的好み以外の選択基準、友人や会社の絡み、価格や割引率、更にはマーケティングによる差は大きくなりやすくなります。

ここに来て日本の自動車産業は大丈夫か、と思わせるニュースが相次いでいます。日産の4-6月決算の営業利益が99%減と発表しました。理由はハイブリッド車を押し出せず、北米で値引きをしたことで利益率が圧迫されたことによります。当地にいる限り、日産は市場へのメッセージがすっかりなくなってしまい、非常に残念な思いです。その点ではまだカルロスゴーンの時代の方がわかりやすかったと思います。

日産・内田誠社長と本田・三部敏宏社長 日産HPより

ホンダは中国でガソリン車の生産能力を3割減させるとあり、日野自動車は中国でのエンジン生産から撤退です。日産は中国での工場稼働率が5割程度となっており、ガソリン車の工場を6月に閉鎖しましたが、さらに追加閉鎖がありそうです。これは日本製鉄の中国7割削減と同じ構図で、中国車の品質が上がり、国を挙げて進めるEV化に背いてまでして日本車を買う理由が薄れてきているのが背景だと考えています。

自動車産業はそれでも日本経済の屋台骨であり、雇用を含めて経済界のリーダーであります。ここを死守したいなら官民を挙げた構造的変換を思いっきりよくやる以外乗り越える道はないと考えています。真綿で首を締めるというのはこのことで前例にとらわれない英断が求められると思います。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年7月26日の記事より転載させていただきました。