ここでいう「金だけ」というのは対価に見合わない仕事で不正に見返りだけ求めるケースや、お金を得る代わりに信用や人望を捨ててしまう生き方を指している。目先の小さなお金を得る代わりに人が離れていく人生は、誰にとっても辛いのではないだろうか。
「自分だけ」、人は相互扶助の社会で生きている。理想的な生き方は三方よしである。この言葉は、江戸から明治にかけて活躍した近江商人から来ているとされ、「買い手よし・売り手よし・世間よし」ということだ。いい仕事をするとよく売れる、お客さんは喜ぶ、納税や社会を豊かにすることで三方よしになる。
憎むべきは「売り手よし」と自己中心的になっている商売であることは言うまでもない。今どき、不誠実な仕事をすれば、あっという間に拡散して糾弾される。自分だけ、は病苦や経済苦に匹敵する苦痛を伴う「孤独」が待ち受けているのだ。
余裕がないとそうなる普通の人間は「今だけ・金だけ・自分だけ」で幸せになれるようには作られていない。自分自身、幸福を感じるのはより良い未来を迎えるために今のリソースを使って努力をしている時、いい仕事でお客さんに喜ばれた時、そして家族で一緒に幸せな時間を過ごしている時であり、この刹那主義の自己中な生き方はまったく楽しいと思えないし、やりたくはない。
しかし、それは今の自分が気持ちの余裕を得たからであり、余裕がない時期はまったくこれに当てはまっていた。だから誰しもそうなる可能性はあるし、逆に言えば今そうでも将来抜け出せる可能性もあるといえる。
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「貧すれば鈍する」という言葉がある通り、経済的にも精神的にも貧しくなると、人は愚かになる。まさしく、「今だけ・金だけ・自分だけ」はその結果なのだ。
この確実に不幸になる生き方を回避する方法は、余裕を得ることである。ある程度、潤沢な資産や収入があり、時間の余裕があり、人間関係が充実していれば、誰しもこの段階から脱する時がやってくる。その時、こんな生き方は浅く、つまらなく、何より孤独になることを理解するだろう。
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