アマゾン北西部で伝統的に用いられている幻覚剤「アヤワスカ」を実際に服用するとどうなるのか。有名人がメキシコのジャングルでアヤワスカを一服盛った体験談を語っている。良くも悪くもそれは「人生を変える」体験になったということだ。
■アヤワスカを飲むとどうなる?
南米アマゾン川流域に自生するツル科植物を原料にして作られる幻覚剤、アヤワスカ(Ayahuasca、Ayawaska)は先住民族の宗教儀式や民間療法に伝統的に用いられているが、服飲すると嘔吐を伴う強力な幻覚作用をもたらすといわれている。
テレビ司会者で探検家のマイク・コーリー氏が、メキシコのジャングルにある先住民族の小屋の中で数人の人々と共にアヤワスカを服用した体験を自身のポッドキャスト番組「Fearless and Far」の中で語っていて興味深い。
先住民の小屋で行われたアヤワスカ体験会の十数人の参加者の1人として、コーリー氏はその時の様子を詳しく語っている。
小屋の中は1本のロウソクの明かりだけが灯されており、レクチャラーの男性がロウソクに手をかざすと、その手の影がまるでタランチュラのような不気味な形態で小屋の壁や天井に浮かび上がったという。
全員が揃ったところでアヤワスカ最初の1杯がショットグラスほどのサイズの容器で振る舞われた。
全員がその液体を一口飲んだ後、ロウソクの火が吹き消され、部屋の中は真っ暗闇になった。
「それ(アヤワスカ)はほとんど芝刈り機の下から出た刈りくずのような味でした。燃料と植物が混合したもので、とにかく身体に悪そうでした」(コーリー氏)
アヤワスカを服用した人がその後すぐに嘔吐するのはよくあることで、最初に全員に渡されたボウルに何人もの人が吐いている音が聞こえてきたという。
コーリー氏にとって最初の一杯はほとんど効果がなかったように感じたが、しかしロウソクの火が消されてから徐々に幻覚がはじまってきたという。マヤ遺跡の寺院の彫刻のような幾何学的な形状のいくつかのパターンが繰り返し目の前に現れるようになったという。
「これによって『幻覚剤を服用したときに見えるものがあるとしたら、それは実は常にそこにあり、それが見えるようになっただけなのか』という疑問が湧き起ってきます。それとも脳は周囲の世界の見るべきものを脳内に描いているのでしょうか?」(コーリー氏)
この時点で視界はぐるぐる回る幾何学模様のパターンが繰り返されていたが、コーリー氏は少しだけ小屋の外に出ることにした。
「よろめきながらドアから出て、外で10フィートくらいのところまで歩いて、ズボンのチャックを下ろしておしっこに行きましたが、問題は私の行動がめちゃくちゃだったということです。(尿は)何も出てこなかったので、どれくらいの間そこに立っていたのかわかりません」(コーリー氏)
その数分後、コーリー氏は嘔吐した。そしてその時点で彼は自分がどこにいるのか全く分からないことに気づいた。
「私は周りを見回し、視界の中にある渦巻く模様から葉や岩を解読しようとします。ヘビの群れのようにうごめく葉っぱの山を見て、『ああ、これはヘビではないかもしれない』と思いました。パッと見、葉のように見えますがその後変化していきます」(コーリー氏)
この時コーリー氏は目が開いているのか閉じているのか判断できなくなるほどハイになっていたため、抱えていた毛布にくるまって床の上でジッとしていることに決めた。
「そのときから事態は恐ろしくなりました。私は海で揺れていて、ほとんど浮くことができませんでした。 私は猛スピードで走る電車に小指1本でつかまっていて、自分がどこにいるのかもわからなくなり、カラフルな模様が渦巻く世界に迷い込んでしまいました」(コーリー氏)
床の上でうずくまっているだけのコーリー氏であったが、そんな現実にお構いなく周囲の状況はダイナミックに推移しており、常に危機一髪の事態に直面していたのである。