「退職代行」という画期的なサービスとキャッチーなネーミングで一躍話題になった「退職代行モームリ」から、7月に初の書籍『退職代行業者が今すぐ伝えたい!Z世代が辞めたい会社』が出版されました。

同サービスを運営する株式会社アルバトロスの代表取締役・谷本慎二さんは、本書は「会社の辞め方」を教える内容ではないと語っています。

インタビュー後編では谷本さんに、「退職代行モームリ」に関する海外メディアの取材についてや、退職代行が目指すところについてお聞きしました。

日本は会社側が強く、労働者が弱い

―――多くのメディア取材の中で、海外からの取材も受けていらっしゃるとのことですが、海外の取材を受けて、日本と違うと感じる点はありますか。

谷本さん:ほとんどの国から聞かれるのは「どうして従業員自身で退職を伝えられないのか」「すぐに退職できないのか」ということです。

―――それに対し、どう説明していますか。

谷本さん:海外は会社・労働者が対等なのに対し、日本では、完全に会社側が強く、労働者が弱い。だから、日本では、会社が辞めるなと言ったら労働者は辞められないと伝えています。

あと、日本人の気質として、思っていることをそのまま口に出さないのが美徳とされているからだとも話します。

例えばアメリカだと、生涯の平均転職率は10〜12回くらいなんです。一方、日本だと2〜3回です。

海外だと転職は自分のキャリアアップの手段であり、どんどん転職して、最終的に良い会社・仕事を見つければいいじゃないかという考え方ですが、日本だと、同じ会社で長く働くことが良いと考えられていて、いまだに転職=逃げ、悪という声も多いですね。

―――今の20代だと、転職=逃げ、悪という価値観はかなり薄れていると思うのですが、そうでもないのでしょうか。

谷本さん:日本でも、転職は悪くないという意見が増えてきましたが、まだ根付いていないと思います。なぜなら、退職代行を利用される方の多くが「会社に申し訳ない」とか「会社を辞めるのが怖い」と言うんです。「次の会社でがんばります」という方はいません。

なので、私たちが声を大にして言うことによって、転職は悪いことではないという風潮がもっと浸透していけばいいと思ってます。

退職代行とは、長期的に退職率を減らしていくもの

―――離職率を減らすために、日本の各企業・従業員がそれぞれどうしていけばいいと思いますか。

谷本さん:企業に関しては、自社で改善していただくのが一番ありがたいのですが、これだけ働き方とか労務関係の問題が世間で取り沙汰されていても、まだ改善に至っていない企業が多いので、私たちのサービスが会社に対する抑止力になればと思っています。

私たちが退職代行の連絡をすることで、会社としてこのままではいけないと危機感を持っていただきたいです。

退職者はすぐに減らないかもしれませんが、労務関係や人間関係を改善することで、長期的に見たら退職率が減ってくると思います。そのための退職代行サービスだと思っています。

―――新規事業の「セルフ退職ムリサポ!」はどんなサービスなのでしょうか。

谷本さん:退職したいけれど退職代行を使いたくない方に対し、自分で退職するためのコンサルティングを行うサービスです。

今後、退職代行サービスの利用者が増えていくと、ゆくゆくは会社側が危機感を覚えて、労務関係などの問題を改善していくと思います。そうすると、退職代行の依頼が激減していく。

ただ、退職に関する悩みというのはなくならないと思うので、次世代のサービスとして、このサービスを始めました。

―――このような新規事業を考えるときのポイントやコツは?

谷本さん:どこかの会社のキャッチフレーズでもありますが「あったらいいな」を形にすることです。

「ムリサポ!」についても、YouTubeを見ながら、こういうサービスがあったらいいのではないかと思いついて、次の日からサービス開始に向かって動きました。