横断歩道や数メートル先の車の往来も認識

同デバイスは1秒間に100回の計算を繰り返し、安全に歩ける場所を探す。何と、路上の水たまりまで認識してくれると.lumenは主張する。

上の動画を見ると、車道を横切るゼブラゾーンまでちゃんと読み取ってくれていることがうかがえる。また、白杖では感知することができない数メートル先の車の往来なども認識できているようだ。

また、動画に登場するデバイス装着者の男性が、点字ブロックの上を歩いているわけではないというところにも注目したい。白杖も盲導犬も点字ブロックもない状態で、ややゆっくりの速度だがスムーズに歩き通している。

さらに装着感などにも配慮し、誰にとっても長く愛用できる製品を目指している。数百回の改良を経て耐久性を上げつつ、約80%の成人の頭部に適合するような設計になっているそうだ。

トヨタ・モビリティ基金のコンテストに採択

すでに20か国以上の国でテストを行い、今年中の発売を予定しているという同デバイスだが、日本にとっても遠い存在ではない。.lumenはトヨタ・モビリティ基金のアイディアコンテスト「Mobility for ALL 2024」の採択チームの一つとしても名を連ねているのだ。同コンテストは「移動の可能性を、すべての人に」をキャッチコピーにした取り組みで、人の移動にまつわるイノベーションを発掘することを目的におこなわれている。

スケジュールによると、採択チームは今年11月に富士スピードウェイなどで実施される実証実験に参加するとのこと。これにあわせ、.lumenは日本での実証実験に対して前向きなコメントをブログ内で発表している。

SeedBlinkでは“1日”で目標額を達成

Image Credits:.lumen

これとほぼ同時期に、.lumenは巨額の資金調達を報告している。

今年7月までに欧州イノベーション会議やVenture to Future Fundなどから400万ユーロ、そして投資プラットフォームSeedBlinkでの募集で100万ユーロの計500万ユーロが.lumenに手に渡った。特にSeedBlinkでは、募集開始からわずか1日で目標額の100万ユーロが集まったという(プレスリリース)。

これらの資金を生かし、.lumenは2026年末までに1万台の生産を目指す。

同社CEOであり創業者のCornel Amariei氏は「今回のSeedBlinkでの記録的なラウンドは、ルーマニアのイノベーションの可能性を証明するものです。EUで最もイノベーションの少ない国としてランク付けされているが、ルーマニアは人生を変えるようなイノベーションを世界に提供できると信じています。」と語った。

.lumenは同デバイスを「盲導犬よりもさらに正確な視覚障がい者向けウェアラブルデバイス」と銘打っている。日本での実証実験に意欲的な姿勢を見せているため、同デバイスを間近でみられる日もそう遠くないだろう。空間コンピューティングやAI技術の革新にともない、視覚障がい者の歩行サポートが大きく変わるかもしれない。

(文・澤田 真一)