盲導犬は、視覚障がい者にとっての「目」である。一方、盲導犬を必要とする人の数に対して、盲導犬の数が絶対的に不足しているという大きな課題もあり、日本盲導犬協会は育成頭数を拡充する必要性を訴えている。

そしてこれは日本だけでなく、世界的な問題でもある。ルーマニアのスタートアップ「.lunen(ドットルーメン)」は、自社サイトで“3億3800万人の視覚障がい者に対して、盲導犬が2万8,000頭”と掲示。国際失明予防協会(ISPB)によると、この数は全盲もしくは中~重度の視覚障害者を指しており、盲導犬の数が圧倒的に足りないことがみてとれる。

.lunenはこの課題を解決すると同時に、世界中の視覚障がい者の自由と安全を確立することを目指して、自動車の自動運転技術を歩行に応用し、目が不自由な人をサポートするAIウェアラブルデバイスを開発している。

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3Dで環境認識、安全な経路計画してユーザーへ伝達

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.lunenのウェアラブルデバイスは、ユーザーの額部分に装着する形である。同デバイスには小型カメラや各種センサーが搭載され、取得したデータをコンピューティング処理し、ユーザーの移動経路を導く。どのように装着者に伝えるのかというと、それは盲導犬と同じく、人間を“引っ張る”と表現されている。装着者の額部分に設けられた触覚インターフェースが「引っ張る感覚」を与えてくれるそうだ。

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たとえば、街を歩く時は歩道や車道、通行人、車、電柱などが存在し、さらに自然のなかであれば木々などの障がい物も存在する。それらをセンサーで認識し、なおかつAIを活用した数百のアルゴリズムの組み立てによって、安全な経路計画を導き出し、ユーザーを“引っ張る”感覚で確実な障がい物回避を実現する。

飛んでくるボールを認識し、キャッチする様子も

一方、車の自動運転であれば、適切に舗装・設計された道路を走ることが前提であるが、歩行者の場合そうはいかない。同社はこれを解決する術について非常に難しいとしつつも、視覚障がい者にも同じレベルの自由度、独立性を提供したいと考えている。


開発メンバーは自分たちで目隠しをして視覚障がい者と同じ条件で外を歩き、プロトタイプを何度も作って、ときには壊し、開発を進めたそうだ。同社の公式サイトでは動画が公開されているが、驚くべきことに、数メートル先から投げられたボールのキャッチに成功する様子もみてとれる。視覚よりも桁違いに優れた応答力で物体や経路などの方向情報を表現できることから、まさに“盲導犬以上の役割を担う”仕組みであるともいえる。データを映像処理するのにかかる時間は数ミリ秒とされ、もちろんユーザーの声や指示も即座に認識できるという。