イギリスで労働党政権が成立し、保守党政権時代に維持し続けていたUNRWAへの資金提供停止の解除を決めた。UNRWAについては、イスラエルがテロ攻撃に関与していたという糾弾を行ったため、欧米系の主要ドナーが資金提供を停止する事件が発生した。

しかしその後の調査では、イスラエルの糾弾を裏付ける証拠が見つからず、UNRWAの代替不可能な重要性も鑑みて、ほとんどの諸国が資金提供を再開した。頑なに停止し続けているのは、今やアメリカくらいになった。しかしアメリカは、国連での投票行動でも示されているように、最後の一カ国になっても、イスラエルと共同歩調をとるだろう。

それを信頼して、イスラエル国会(クネセト)は、遂にUNRWAをテロリスト組織とみなす法案を暫定承認した。何が真実か、証拠はあるのか、といったことは、もはや主要な議題ではなくなっている。イスラエルは、UNRWAを潰しにかかってきており、それによってガザを人道援助も届かない空間にしようと企図している。アメリカはそれを支援している。

イスラエルは、国際司法裁判所(ICJ)から、占領政策を止めなければならないという勧告的意見を受けた。先に、ジェノサイド条約に基づく軍事作戦停止の仮保全措置命令も受けている。なおネタニヤフ首相の訪米中にも、国際刑事裁判所(ICC)が、逮捕状を正式発行する可能性がある。

これらについて、イスラエルは、アメリカとともに、全て、無視することを公言している。イスラエル/アメリカと、国際社会の法の支配は、両立しない。この明白な事実から、目を背けることは、不可能だ。

日本は、同盟国・友好国にならってUNRWAへの資金提供を一度停止した。しかし欧州諸国の多くが再開し始めたところで、資金提供を再開した。岸田首相が、ヨルダン川西岸のパレスチナ被占領地域の入植者個人4名に資産凍結の制裁を加えるニュースも流れたが、これはアメリカ政府の措置をさらに小規模にして模倣したものでしかなく、実質効果を伴わず政治的な効果がないように計算した、アメリカやっているなら、それくらい日本もやっておいてもいいだろう「制裁」でしかない。

日本の中東外交は、アメリカ/イスラエルを非難したくないが、原油輸入の90%を依存するアラブ圏との緊張も望まない、というバランス外交の立場が伝統だ。そのためガザ情勢をめぐっても、一貫して欧米諸国に追随しながら、なるべく穏便に目立たないようにする態度に終始している。

ところがアメリカが完全に孤立する場面が、あまりにも過激だ。日本は、その際には穏健な欧州諸国と共同歩調をとるような判断をする、というやり方で、何とかバランスを制御しようとしてきている。

しかしこのコウモリ外交が、緊張が極度に高まっているガザ危機において、ずっと持続可能なのかどうかについては、私個人は、かなり疑っている。

中国からは、ハマスとファタハを含むパレスチナ諸勢力を和解合意させる仲介を、中国政府が果たした、というニュースが飛び込んできている。中東の和平は、もはやアメリカ主導だけでは動いていかないことは、間違いない。日本が、どんなに強くそう祈り続けても、ダメだ。

日本が強い関心を持つアメリカの大統領選挙と、中東情勢が目立って結びつくネタニヤフ首相の訪米は、大きな注目を払うべきポイントになっていくだろう。