イスラエルのネタニヤフ首相が、アメリカに到着した。トランプ氏暗殺未遂事件及び共和党大統領候補指名確定、そしてバイデン大統領の大統領選からの撤退とハリス副大統領の大統領候補者としての事実上の決定、という動きの中での訪米だ。議会演説の様子がどうなるかも不確定要素があるが、ハリス副大統領がネタニヤフ首相にどう対応するかは、トランプ大統領がどう対応するか以上に、大きな意味がある。

ハリス副大統領はマイノリティ票の掘り起こしを期待されており、ガザ危機をめぐってパレスチナに同情的とされる発言をしたことがニュースになったこともある。アラブ系米国人が最も多いと言われるミシガン州は、典型的なスゥイング州の一つだ。劣勢の民主党側からすれば、ミシガンを落としたら、その瞬間終わり、と言えるほどの意味がある。ハリス副大統領が大統領候補になったことによって、ミシガン州において劣勢を跳ね返せるかどうか、これからの大統領選挙の行方を占う最重要点の一つであるはずだ。

ネタニヤフ首相とハリス副大統領 両氏インスタグラムより

ネタニヤフ首相は、当然、ハリス副大統領との親密さをアピールして、「万が一」の可能性を封じ込めるだろう。そこに乗っかったら、ハリス氏によるミシガンのアラブ人票掘り起こしの可能性などは霧消する。ただしイスラエルの首相に冷淡な態度を示す、といったことは、アメリカ政治では、タブー中のタブーだ。外交経験が豊富とは言えないハリス氏に、いきなり大きな試練が訪れた、と言ってよい。

トランプ氏のほうは、親イスラエル寄りの立場が確定している。ネタニヤフ氏の訪米を実現したのは、共和党のジョンソン下院議長らだ。フロリダの私邸でネタニヤフ氏と会う予定だという。かなり予定調和的なものになるだろう。

ガザ内の人道的惨禍は悲惨を極める一方だが、ハマス殲滅を掲げるイスラエルの軍事作戦は終わりを知らず続いている。イスラエルは、レバノンのヒズボラとの交戦に続いて、イエメン(フーシー派)との交戦も始めた。戦争は地理的広がりの面でも、徐々に拡大している。