トランプ前米大統領は19日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談をした。会談での詳細な内容は明らかにされていないが、トランプ氏はウクライナ戦争の早期停戦を主張する一方、ゼレンスキー大統領は「公平な和平」の実現を目指すことを伝えたものと受け取られている。両者は「ウクライナにできるだけ早く公正な平和を取り戻すためにどのような措置を講じることができるかを個人会談で話し合うことで合意した」という。

ウクライナ大統領府のオレクシー・クレバ次長(左から2人目)、松田邦紀駐ウクライナ日本大使(左から2人目)と会談(ウクライナ大統領公式サイトから、2024年7月20日)

ウクライナ大統領府の公式サイトによると、ウクライナ大統領は、トランプ氏の大統領選挙における共和党候補者への指名を祝福。ウクライナへの重要な支援に対して米国に感謝の意を表明し、「ロシアの侵略からわが国を守るために米議会における超党派の支援が決定的な役割を果たしている」と強調した。

トランプ氏とゼレンスキー氏はウクライナ和平では異なった立場であることは周知の事実だ。トランプ氏は「自分が大統領になればウクライナ戦争を短期間で解決する」と豪語。具体的には、ロシアのプーチン大統領にウクライナ占領地を認知する一方、ロシア軍はウクライナ領土から即撤回するというものだ。ゼレンスキー氏は自身が発表した「平和の公式」でも明らかにしたように、ウクライナの完全な主権回復、ロシア軍に占領地からの全面撤退をロシアとの和平交渉の絶対条件に挙げている(「ゼレンスキー氏の愛する『平和の公式』」2023年12月15日参考)

トランプ氏は選挙戦でもウクライナ支援では消極的な姿勢が目立ち、ウクライナ問題を欧州の問題と受け取っている面がある。ゼレンスキー氏としては最大の軍事支援国・米国のウクライナ離れを避けなければならない。そのため、トランプ氏の和平案を安易には拒否できない。