「字は人を表す」は本当か?

書道の世界では「字は人を表す」という。それでいうと、筆者の人柄は最悪といって良い。走り書きのメモを後から見て自分でも読めないほどの悪筆なのだ。

しかし、自分はこの意見に懐疑的である。というのも、人間性に疑問を感じる「達筆な人」を見てきたからだ。ものすごく字がきれいな人の中には、強固な思い込みで他罰的、排他的思考の持ち主もいた。「それはこうあるべきだ」という強力な押し付けや、針小棒大に反応する神経質さに苦慮した経験が何度もある。だが、彼らは非常に字がきれいなのだ。

これは1つの仮説ではあるが、きれいな字というのは「読む人への配慮があって読みやすくきれいに書く」という前提で書かれたケースもあれば、性格がきっちりしており、時に「繊細」を通り過ぎて「神経質」な性格がきれいな字に反映されるケースもゼロではないのではないだろうか。

それを言い始めると、字が汚い人の中にも優秀な人もいるし、逆に一切の学業に触れてこず字を書く経験がほぼなかったために字が汚い人もいる。結局、字のきれいさだけではその人のことは何もわからない。つまり、字を整える必要性が薄れた現代、無理にきれいな字を書くことに固執する必要はないのではないかと考える。

筆者の考えでは「字は人を現す」ではなく「言葉遣いは人を現す」だと思っている。言葉遣いは相手への配慮、距離感、価値観、感情のコントロールなどあらゆる人間性が全面に出る。とっさに取り繕っても隠し通せない。整えるべきは字ではなく言葉遣いだと思うのだ。

 

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