参考までに、トランプ氏の不倫問題については、「神はダビデを使われた。ダビデは側近ウリヤの妻を愛していた。そこでダビデはウリヤを最も激しい戦場に送り、そこで戦死させると、ウリヤの妻をめとった。ダビデは明らかに過ちを犯したが、神は間違いを犯す人物を使って巨悪に立ち向かう。トランプ氏も間違いがあるが、神はそのような人物を神の摂理で利用される」と解釈している。ちなみに、トランプ氏は1月末、支持者にビデオを送り、「私は神が遣わした者だ」と宣言している、といった具合だ(独週刊誌シュピーゲル2024年3月9日号)。

米大統領選では神は生き生きとした存在として現れる。神が関与しない限り、候補者は当選できない。トランプ氏は今回、暗殺未遂事件を通じて神から刻印を押された候補者となった。多くの米国民は神がトランプ氏を救うために直接関与した出来事を画像を通じて目撃したのだ。

なお、ドイツの民間ニュース専門局ntvのコラムニスト、ウォルフラム・ヴァイマー記者は16日、「トランプ暗殺未遂事件は、アメリカの政治情勢に大きな変化をもたらした」として、「トランプ暗殺未遂事件の5つの驚くべき影響」をまとめている。

以下、その概要を紹介する。

暗殺未遂はトランプの支持者たちに大きな連帯感と動員力を生み出した。1981年のレーガン暗殺未遂事件後のように、トランプ氏のイメージは大きく変わり、同情と支持が集まった。当時のレーガン大統領が撃たれた際、支持率は一気に22ポイント上昇した。 新たな状況はジョー・バイデン氏に対する政治的圧力を増大させ、新たな候補者に道を譲るよう促すだろう。 J・D・バンス上院議員が重要な存在となり、トランプ氏の後継者となった。 深く分裂したアメリカ社会は、暗殺未遂事件によりさらに内部分裂が進む可能性が出てきた。 暗殺未遂事件により、トランプ氏のメディア企業の株価が急騰した。「トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ」は15日に31%上昇し、40.58ドルとなった。これにより、トランプ・メディアの市場価値は約77億ドルとなった。同社の主要株主であるトランプ氏は、65%の株式を保有しており、株価上昇によりその価値は約50億ドルとなった。暗殺未遂事件前には、トランプの持株の価値は約38億ドルだったから、暗殺未遂事件により、トランプ氏の資産は一気に12億ドル増加した。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年7月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。