本の終わりを見ないために努力を続ける
―――目黒さんのように、売れる編集者になれるかどうか不安です。
あくまで編集者として成長していく視点でお話しすると、私は本が売れることがすべてだとは思っていません。たとえば、「100万部売れた本1作品」と、「10万部売れた本10作品」なら、私は後者のほうが自分の成長につながる人材になれると思います。
極端な例ですが、どんなに売れても1冊しか経験していない人は、1冊の作り方しかわからない気がするんですよね。
若者だけでなく、我々編集者は本を作る練習ができるわけではないので、実際に制作の経験をしながら引き出しを増やしていくしかないんです。もっとも、1冊で100万部も売れたら、全然違う景色が見えるかもしれませんけど……。
―――編集者として大事な心構えがあれば教えてください。
本の終わりを知っているからこそ、終わらないために“もがく”のが編集者としての心構えです。
私たちは、自分が生み出した本の行く末を見届ける義務があります。本が売れないときには、裁断されてしまうなどの悲しい現実を受け入れることを覚悟しておかなければなりません。
本という大事なものの命をいかに守りつつ、多くの人に読んでもらうかを考える意識は、いまのうちから持っておくと良いのではと思います。
「企画を通す」ことをゴールにしない
―――編集者として欠かせない「企画」の出し方について、若者へアドバイスをお願いします。
最近の若い人の企画を見ると、リサーチもしっかりできていて、欠点が見当たらないことが多いんですよね。でも、どこか物足りないというか「本当にこの本を作りたいのかな?」と感じることがあります。
それは「企画を通す」ことがゴールになっているのが原因だと思います。私も入社してからしばらくは「企画は面白いけど、実際に出す本は面白くないね。」と上司から言われていました。
当時は、作りたいと思う企画に対して、自分の能力が追いついていなかったんですよね。「意あまって、力及ばず」という状態です。
つまり、企画を通すのがゴールではなく、あくまでその先が大切であることを理解している必要があったといえます。
いかに作った企画を妥協せずに実現するかは、私がいまも大事にしている考え方の1つです。
―――最後に、編集者を志したいと思う若者が1歩踏み出せるようなメッセージをお願いします。
若者には、失敗を恐れずに自分の作りたい作品をどんどん企画として打ち出してほしいと思っています。失敗しないように60%の作品を作っていると、いつまでも残りの40%の壁を壊せない編集者になってしまうからです。
また、無難に既存のものを踏襲した作品を出しても、編集者としての成長が期待できず、将来の自分の首を締めるだけです。どうか、思い切りチャレンジをしてみてください。
たとえ失敗をしたとしても、培ったスキルやノウハウを生かし、次にチャレンジする本で取り返せるのが、編集者の面白さです。