歴史上、大災害後に島やそこにあった文明が消失する物語は数多く存在している。しかし、ソロモン諸島から姿を消したテオニマヌ島を知っている人は少ないだろう。何しろその存在は、今日の地域住民の文化的記憶によって初めて知ることができたのだ。

太平洋に消えた島「テオニマヌ」には何が起きたのか ― 語り継がれる伝承や神話が意味するもの
(画像=Created with DALL·E,『TOCANA』より 引用)

テオニマヌ島の消失:口承から見える歴史の一端

 伝承や神話は、人類の文化における重要な要素のひとつである。そうした伝承の多くは幻想的であり、現実ではあり得ないような描写があるが、それらは世代から世代へと伝えられる多くの抽象的な「真実」を運ぶものではないだろうか。

 しかし、そうした「教訓」に加えて、神話は遠い過去に起こった出来事に関する歴史的な情報源でもある。一部の研究者はこれに気づいていたが、広範な科学コミュニティが、地元の神話を通じて何千年も前に起こった地質学的な出来事に注目し始めている。

 テオニマヌ島はその例のひとつだ。Google Earthで9°59’36″S 、161°59’10″E(東経161度59分10秒、南緯9度59分36秒)を検索すると、何が見つかるか……?

太平洋に消えた島「テオニマヌ」には何が起きたのか ― 語り継がれる伝承や神話が意味するもの
(画像=画像は「Google Earth」より,『TOCANA』より 引用)

 そこには何もない。太平洋に濃い青色の領域が見えるだけだ。しかし、この濃い領域は、ラークショールと呼ばれる、水深1〜14メートルの過去に沈んでしまった小さな陸地を示している。

 しかし、もしGoogle Earthを数百年前に巻き戻すことができたなら、今日のラークショールの場所に島が見えたであろう。そこがかつてテオニマヌがあった場所である。

 テオニマヌが沈む前、周辺の他の島と同じように、この島には何百人もの人々が住んでいたとされる。これは、中央ソロモン諸島の住民の伝承や歴史に基づいて地質学者のパトリック・ナン教授が述べたものだ。

 ナン教授によれば、これらの島々はおそらく16世紀末から18世紀末の間に消えたと思われる。具体的には、スペインの探検家アルバロ・デ・メンダーニャ(1568年)とイギリスの探検家ジェームズ・クック(18世紀後半)がこの地域に到達した時期である。

 テオニマヌは急速に沈んだと言われている。伝承によれば、ほんのわずかな人々だけがカヌーに乗り、他の島の安全な場所に到達したとされている。どうやら、これらの島々は海底火山の影響で巨大な津波に襲われて水没したようだ。

 この地域に何世代にもわたって住んできた人々の口承がなかったなら、おそらくこの出来事については知ることはなかったのではないだりうか。ナン教授は、「彼らの物語は伝説や虚構と思われる可能性がありますが、多くの古代の物語と同様に、真実の観察が、時間の経過とともに物語の装飾の層に包まれて残っています」とも述べている。