退職の意思表示についてその真実性の確認

 そんな退職代行サービスだが、会社側が訴訟予告を行うことによって、従業員による退職代行サービスの利用を排除できるのではないかという指摘がSNS上で話題となっている。もし退職代行サービスを利用して企業側から提訴されれば、高額な費用を払って弁護士に訴訟対応を委託することになるため、低額の退職代行サービスを利用する意味はなくなるという見方だ。

 山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。

「この『退職代行』ですが、弁護士資格を有しない以上、『代理人』ではないので、会社は、直接、本人に対し『本人の退職意思の有無』を確認することができます。本人が、たとえ『退職代行業に依頼したからそっちと話してくれ』などと言い訳をしたとしても、この『本人の退職意思』の真実性などが確認できない限り、退職もへったくれもありません。もちろん、退職の意思表示は郵便でもできるわけですから、この『退職代行』によってもできます。

 しかし、会社としては、突然の退職の意思表示についてその真実性の確認(「こちらは退職代行会社の●●ですが、御社の●●が退職するとのことです」と電話で聞いたところで、誰も信用しません)、私物の持ち帰り、保険証や貸与品の返還、離職票や源泉徴収票の発行、引継ぎなど、さまざまな連絡を取らなければならないわけですから、本人に連絡をとることは当然です。

 そうすると、会社としては、本人と連絡をとれない以上、『無断欠勤』と判断せざるを得ず、この場合、本人の職務放棄によって会社に生じた損害の賠償を請求することも可能となります。

 もちろん、労働者には転職の自由があるわけですが、『退職の意思』を伝えることは『雇用契約の解除』という法律行為を行うことを意味しますので、代行などというわけのわからないサービスに頼るべきではありません。私は、弁護士として、この『退職代行』という法律行為の“代理まがい”のサービスについて、手放しに認めません」

(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)

提供元・Business Journal

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