ザリガニ以外の水生生物の性格も変わってしまっているかもしれない

セロトニンは地球上の様々な生物が脳内の伝達物質として使っているため、セロトニンの量に影響を与える薬は幅広い水生生物に影響を与える可能性がある
セロトニンは地球上の様々な生物が脳内の伝達物質として使っているため、セロトニンの量に影響を与える薬は幅広い水生生物に影響を与える可能性がある / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

今回の研究により、人間用の抗うつ薬(SSRI)が、ザリガニに対して行動変化を引き起こす要因であることが示されました。

SSRIによってザリガニはより大胆になり、エサに対して貪欲になりましたが、この変化は必ずしもザリガニにとってプラスではありません。

警戒心を忘れた大胆な行動は捕食者に対して脆弱になり、ザリガニ自身の身の危険を増やし、結果的に種の衰退につながる恐れがあるからです。

研究者たちは今後、ザリガニ以外の水生生物に対するSSRIの効果を調べていくとのこと。

ザリガニに起きたような行動変化が他の無数の水生生物に対しても起きている場合、生態系全体に甚大な影響が起きている可能性が考えられるでしょう。

※この記事は2021年6月公開のものを再掲載したものです。

全ての画像を見る

参考文献

FLUSHED ANTIDEPRESSANTS MAKE THIS ANIMAL UNUSUALLY “BOLD,” SCIENTISTS DISCOVER
https://www.inverse.com/science/crayfish-antidepressants-in-waterways-septic-water-treatment

元論文

Exposure to a common antidepressant alters crayfish behavior and has potential subsequent ecosystem impacts
https://esajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ecs2.3527

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

やまがしゅんいち: 高等学校での理科教員を経て、現職に就く。ナゾロジーにて「身近な科学」をテーマにディレクションを行っています。アニメ・ゲームなどのインドア系と、登山・サイクリングなどのアウトドア系の趣味を両方嗜むお天気屋。乗り物やワクワクするガジェットも大好き。専門は化学。将来の夢はマッドサイエンティスト……?