ヤマト運輸は1月31日、メール便の配達などを委託してきた「クロネコメイト」と呼ばれる個人事業主およそ2万5000人やパート社員約4000人との契約を打ち切った。同社は2月からこのサービスを日本郵便に委託することになっており、今回の契約打ち切りはその業務移管に伴うものだ。

 ヤマトは昨年10月、対応策としてクロネコメイト1人当たり3〜7万円の謝礼金支払いや、パート社員に対しても賃金3カ月分に相当する慰労金を支払うと公表している。また、未消化分の有給休暇の買い上げについて個別に説明するとしていた。

クロネコメイトとパート従業員への対応に差

 ヤマトが日本郵便との協業を発表したのが昨年6月で、その直後から契約打ち切り対象の従業員らから不安の声が噴出していた。一部の個人事業主らは労働組合に加入して団体交渉を申し入れしてきたが、ヤマトは「個人事業主は団体交渉の対象にはならない」という理由で団体交渉をすべて拒否してきた。これに対し、「勤務実態は労働者」というのが労働組合側の主張だ。

 会社から「使用」されて「賃金」が支払われているという「使用従属性」がどの程度あるのかを「労働者性」と呼ぶ。契約形態がどうあれ配達員に実質的な労働者性があれば、会社は団体交渉に応じなければならない。労働組合側はこの点を強調してきた。

 昨年11月からヤマトは急に契約打ち切り対象の従業員に対して配置転換の打診をしているという話が聞こえてきた。ヤマトの態度が軟化したのかと思いきや、よくよく聞いてみると、ある店舗で働くパート社員数人が労組を結成して団体交渉を行ったところ、パート社員の契約終了を見直して全員の希望を確認し始めたということらしい。ニュースによれば、1350人が社内に再配置というかたちで残ることになったようだ。

 全国一般三多摩労働組合の朝倉玲子書記長は、「組合には、クロネコメイトさんへの配置転換の話はきていません」と言い、ヤマトとの交渉過程について次のように話す。

「昨年、ヤマトから解決案を出してほしいと言われて、出しました。東京都の労働委員会が1月24日に開催されたときに先方に会ったのですが、その解決案について『話し合いの場でもう少し詰めたい』と言われました。交渉日程を後から連絡しますとのことでしたが、2月1日現在、まだ日程が届いていません。そのあたりがいい加減だなと感じています(編集部追記:2月2日にヤマトから回答あり)。なお、ヤマトはいまだに『団体交渉』とは言わずに『個別対話』という言葉を使います」

 新聞でも報道されたヤマトの対応策についても聞いたが、朝倉さんの評価は厳しい。

「対応といっても結局は仕事の紹介で、確かに紹介された仕事のなかに郵便局のものも入っています。ただ、それには年齢制限があります。そうすると、クロネコメイトさんたちは65歳を超えている方が多いので、新しい仕事がないのです。それから、1月末まで在籍した場合の退職金は本当に涙金みたいなものなので、これで交渉を終わらせることはできません」