第二次世界大戦中、日本・広島の孤児院を舞台にナチス・ドイツによる極秘の人体実験が行われていたという。日本の孤児たちを対象に続けられた脳外科手術は、なんと“不老不死”の人間を作り出す人体実験だったというのだ――。
■孤児たちを対象にしたナチスの“不老不死”人体実験
人々の暮らしを混乱に陥れ多大な犠牲をもたらす戦争はなんとしても回避しなければならないが、実は科学者たちにとってまたとない好機でもある。平時の時には倫理的に許されない種類の研究や実験が、戦争を隠れ蓑にして秘密裏に着手できる条件が揃うからだ。
戦時中の人体実験としてはあの悪名高い関東軍「731部隊」の例もあるが、ナチスでもまた数々の極秘の研究が行われていたことが終戦後に発掘された資料から明らかになっている。
ナチスもまた大戦中に各種毒薬や生物兵器の人体への効果を探るいくつもの非人道的な人体実験を行っていたことが戦後明らかになった資料からわかっているが、その中には“不老不死”を探究した大掛かりな人体実験もあった。
“不老不死”研究の前段階にあったのは、“スーパー兵士”を養成する研究である。前線で戦うナチスの兵士たちが戦闘の恐怖を克服し、身体能力と集中力を最大限発揮し、負傷した際の痛みも感じないドラッグの開発にナチスは成功したといわれている。
「D-IX」と名づけられたそのドラッグは、集中力を高め、恐怖心を除去し、英雄的行動に繋がる自信を大幅に高め、スタミナと体力を向上させ、痛みを打ち消し、空腹や喉の渇きを感じなくなり、睡眠の必要性まで減らすといわれていた。
そのドラックは最初にザクセンハウゼン強制収容所の囚人でテストされ、すぐに軍の志願者に投与されて有望な結果がもたらされた。服用した兵士はスタミナと注意力が劇的に向上し、最大80マイル(約130キロ)まで休憩なしで行軍できるようになったのである。まさに“スーパー兵士”の出現だ。
開発された1944年3月16日以降、「D-IX」は限られた範囲で公式に使用されたが、薬物中毒になる兵士も少なくなかったということだ。
“スーパー兵士”を作り出すドラッグの開発の次にナチスが着手したのは、なんと“不老不死”の研究であったことが、1999年にハンブルクで見つかった古いナチスの文書から明らかになったという。
しかし、この“不老不死”研究は科学をベースにはしているものの、オカルティックな要素も含まれていた。まず、基本的なコンセプトとして、我々の身体は脳の指示によって寿命を迎えているという認識がある。脳の機能には死を含むすべての生物学的プロセスを制御し、死ぬまでの時間をカウントダウンしている一種のタイマーがあるというのだ。
したがってこのタイマーを無効にすることができれば、身体は無期限に機能し続け、老化さえも止めることができると考えたのだ。脳に仕込まれ、寿命に向かってカウントダウンを続けるタイマーの“スイッチ”をオフにすることができれば、つまり“スイッチ”を取り除いてしまえば、生物学的プロセスの老化が停止し我々は“不老不死”になれるというのである。
1942年にドイツの科学者がこの研究に本格的に取り組み、ドイツ以外の場所で実験を行うことを選択。最終的に同盟国である日本が選ばれた。研究チームは広島の郊外にある孤児院に研究拠点を構え、子どもたちを主な対象としておぞましい人体実験を行うことを決定したのである。
なぜ子どもたちが選ばれたのか? 子どもはまだ老化の“スイッチ”がオンになっていないことから、そのメカニズムをよりよく研究できると考えられたためである。大人と子どもの両方の脳を解剖して比較し、老化の“スイッチ”を探し出す試みがはじまり、研究チームは最終的には小脳で“スイッチ”を見つけたと主張したのだ。