ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)は議会内で連携するパートナーが見つからなかった。ドイツ連邦議会内だけではない。州議会でもそうだった。それだけではない。欧州議会ではフランスの「国民連合」(RN)のマリーヌ・ルペン氏の強い反対もあって右派会派「アイデンティティと民主主義」(ID)から追放されてしまった。

AfDの躍進の柱となるワイデル共同党首(AfD公式サイトから)

話を進める前に、なぜRNのルペン女史がAfDをIDから追放したかを少し説明する。同女史にはAfDに対し2つの疑問があった。ルペン女史は今年2月、AfDのアリス・ワイデル共同党首と会談したが、そこで問題となったはAfDの移民政策だ。特に、「Remigration」(再移民、集団国外追放)についてだ。昨年11月のポツダムでの右派政党関係者の会合内容がメディアに報道されて以来、ルペン氏はAfDに距離を置き出した。第2次世界大戦の初めに、ナチスはヨーロッパのユダヤ人400万人をアフリカ東海岸の島に移送するという「マダガスカル計画」を検討したことがあったが、AfDの再移民政策との関連性が問われた。もう一つは、ロシアと中国の情報機関と接触するAfDのマクシミリアン・クラー欧州議員の容疑問題だ。それらの問題が解決しない限り、ルペン女史はAfDとの連携を拒否するというのだ(「ルペン女史とワイデル党首のパリ会合」2024年3月1日参考)。

ルペン女史は2011年に党指導部に就任して以来、党のイメージ改善に腐心してきた。党名の変更もその一つだった。2027年のフランス大統領選挙を目標としているルペン女史は穏健な中道右派政党を目指し、過激な移民政策を主張するAfDと欧州議会内での連携を避けたいという事情がある。ただし、RNの政策が大きく変わったわけではない。フランス・ファーストであり、国家、フランスの主権を強調し、大国を誇示、欧州連合(EU)とドイツを批判。外国人嫌悪が強く、イスラム教徒に対しては批判的だ。

欧州の政界は欧州議会選でも明らかになったように、極右政党が勢力を伸ばしてきた。AfDも他の極右政党と同様健闘して議席を大きく伸ばしたが、欧州議会で連携できる会派が見つからなかった。そのような時、欧州議会で8日、新しい右翼会派「欧州の愛国者」(PfE)が正式に発足したのだ。ブリュッセルからの情報によると、12カ国、84議員が現時点で新会派に所属している。欧州議会では会派を創設するためには最低、7か国、23議員が必要だ。PfEは欧州人民党(EPP)と社会・民主主義者進歩同盟(S&D)についで3番目に大きな会派となる。そのPfEの中にAfDは入っていない。フランスのRNからオランダ、チェコ、ハンガリー、イタリアから主要な右翼政党は新会派に所属している。AfDは欧州の極右政党のメインストリームから完全にのけ者扱いされたわけだ。

ところで、AfDの孤独な寂しい期間は案外、短かった。ワイデル共同党首の報道官によると、AfDを中心とした新しい会派が創設されたのだ。新会派には9カ国から28人の議員が所属する予定で、そのうち14人がAfD議員だ。新会派に所属する政党の思想は広範囲にわたり、反ユダヤ主義者、ナショナリスト、新ファシスト、人種差別主義者、そしてプーチンの友人たちまで多種多様だ。

ドイツ民間放送ntvのヴェブサイトが10日、掲載した記事を参考に、AfDの新しいパートナー政党を紹介する。