「1スライド・1メッセージ」を心がける

では本来一つのスライドにどれくらいの文量を盛り込むべきなのか。一言で言えば、スライドを見てパッと内容がわかる量であるべきです。

皆さんはTED(Talks)で誰かがプレゼンをしているのを見たことがありますか? TEDは世界中のおもしろい人たちが招かれてアイデアや経験をシェアする国際的なプラットフォームです。

Googleなどで「TED」と検索すれば出てきますが、無料でたくさんのおもしろいプレゼンが見られます。ぜひTEDのプレゼンをいくつか見てみてください。文字がビッシリ書かれたスライドなんてでてきません。

ほとんどの人物のスライドは画像とほんの少しの文字だけ。スライドを使わない人も珍しくありません。話だけで伝えたいことを伝えられる。それがセミナー講師のあるべき姿なのです。

多くのことを伝えようとしない

セミナーで話をする内容を考える時に私が意識してるのは、多くのことを受講者に伝えようとしないということです。なぜこれが大事なのか。それは情報量が多すぎると、受講者側が消化不良を起こしてしまうからです。

皆さん自身、セミナーや勉強会に参加して「今日の勉強会、いろんな話が出たけどイマイチよくわからなかったな」と感じた経験はありませんか? 講師としてはやっぱり、お金を払ってきてくれている受講者にできるだけたくさんお返しをしたい。できるだけ多くのことを持ち帰ってほしい。そう思うわけです。それで「あれもこれも」と伝えたくなってしまうんですね。

しかし問題は、どんなにいい話をしても、メッセージがシンプルじゃなかったり情報量が多すぎると、受講者はその話を消化できないんですね。そうすると、なんだかよくわからなかったなっていう感じで、受講者はセミナー終了後、モヤモヤした気持ちを抱えてしまうわけです。

一方で、たとえちょっとしたことであっても、自分の考え方が変わったり、視点が変わったりするような気づきを与えることができれば、実はそれだけで受講者は満足します。

このことは本を読む時のことを考えるとわかりやすいかもしれません。私の場合、本を読んで役に立ったなぁと感じる時は「そうか! こうすればいいんだ」とシンプルかつ新しいアイデアや視点が手に入った時です。

セミナーも同じように、受講者に少しでも新しいアイデアや視点が提供できたら成功だと言えるでしょう。

たった一つでも気づきを与えられたら十分

私が好きな本の一つに『イシューからはじめよ』(英治出版)があります。外資系コンサルティング会社のマッキンゼー出身の安宅和人さんが、価値ある仕事を生み出すための手法について書いた本です。

この本を読んだ時、「イシューからはじめる」という考え方に衝撃を受けました。仕事にかけられる時間は限られている。その中で価値ある仕事を効率的に生み出すためには解くべき問題=イシューを見極めることが大切だと安宅さんは言います。簡単に言うと、あれもこれもと手をつけるのではなく、本当に解くべき問題を見極め絞り込む。そうするとやることは100分の1になるというのです。

言われてみれば当たり前ですが、この本を読むまで私には「解くべき問題を絞り込む」という発想はありませんでした。私は良いセミナーも同じだと思うのです。極端に言えば、セミナーを受けた後に受講者がシンプルな一つの気づき・メッセージを得ている。もしくは新しい発想・視点を手に入れている。少なくとも私はこれをセミナーのゴールと考えています。

安宅さんの本も「イシューからはじめよ」という一言・シンプルなメッセージを伝えるために10万字近い文章を書いているわけです。セミナーも同じです。伝えたいシンプルな一つのメッセージがある。

それを伝えるためにたとえば2時間、さまざまな例を使って説明をするのです。セミナー終了後に受講生の頭に残ってほしいメッセージは何か? これを意識してセミ ナーの構成を考えましょう。それが実は受講者の満足度を高めるコツなのです。

滝川 徹(時短コンサルタント) 1982年東京生まれ。Yahoo!ニュース・アゴラで執筆記事が多数掲載される現役会社員・時短コンサルタント。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけにタスク管理を習得。2014年に組織の残業を削減した取り組みで全国表彰。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。時間管理をテーマに2018年に順天堂大学で講演を行うなど、セミナー講師としても活動。受講者は延べ1,000名以上。月4時間だけ働くスタイルで4年間で500万円の収入を得る。著書に『細分化して片付ける30分仕事術(パンローリング)』『ちょっとしたスキルがお金に変わる「副業講師」で月10万円無理なく稼ぐ方法(日本実業出版社)』他。

■人前で話す時に「あ〜」「え〜」とつい言ってしまう人が誤解していること(滝川徹 時短コンサルタント) ■セミナーや講座で時間目一杯話をしてはいけない理由(滝川徹 時短コンサルタント) ■本業があるからこそ好きなことができる(滝川徹 時短コンサルタント) ■副業講師で月10万稼ぐ私が、セミナー準備に30分以上かけない理由とその方法(滝川徹 時短コンサルタント) ■副業・セミナー講師が未経験でも有料講座を開催すべき理由(滝川徹 時短コンサルタント) ■セミナー集客の鍵は講師の実績よりも「企画」(滝川徹 時短コンサルタント)

編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年6月27日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。