作業自体は単純だけど、時間の経過が遅く感じる…
果たして山崎製パンのアルバイトの実態とはどうなっているのか。人事コンサルタントで「働き方改革総合研究所」代表取締役の新田龍氏に聞いた。
「基本的に山崎製パンのアルバイトは、パン・洋菓子・和菓子の製造ラインでの仕事がメインで、ラベル、シールの貼り付け、商品のパック詰め、簡単なチェックや仕分けを担当すると言います。またケーキの製造では、バナナの皮をむいたり、イチゴの選別やヘタ取りをしたり、箱詰めしたりといった仕事をすることもあるようです。運搬作業や環境整備作業を担当することもあり、ラインや通路、トイレなど工場敷地内の清掃、食器洗いや食堂のテーブル拭きなどの雑務を任せられることも。
このように作業は多岐にわたるのですが、内容自体はそれほど難しくなく、誰でもそつなくこなせる仕事でしょう。ちなみに通常の製造ラインでアルバイトを募集しているケースもありますが、クリスマスなどの繁忙期には短期で大人数を雇うこともあります」(新田氏)
たしかにシンプルな作業なので誰でもできそうな仕事に思えるが、一般的に食品工場での作業アルバイトは「人を選ぶ仕事」だと語る。
「基本的に工場内は私語厳禁で、ラインの稼働中はずっと立ちっぱなし。いったん製造ラインに配置されると同じ場所から動けなくなるだけではなく、仕事も単純作業の繰り返しなので、すぐに飽きてしまい、達成感を抱きにくい。また長時間下を向いて作業することになるので、首や肩が痛みやすくなるんです。
そして、製造ラインはスピードが速く、流れてきた商品をとにかく迅速にさばかないといけません。何せ相手は機械ですので、人のペースに合わせることなく続々と商品が運ばれてきます。単純作業ではあるものの、慣れるまでには大変ですので、気を抜いていると見落としが出てしまいます。普通のラインでも苦労すると聞きますが、人気商品のラインだとさらにスピードを求められるそうです」(同)
作業を忠実にこなしていないと、社員やほかのアルバイトから叱責が飛ぶケースもあるそうだ。できれば、粗相なく働きたいと思うのが労働者の心理だが、工場で良好な人間関係を築けるかは、入ってみるまでわからないのが現状だという。
「社員や先輩アルバイトのなかには、もちろん人柄のよい人もいますが、高圧的な人、諦観した人などネガティブな人もいます。たまに偉そうな社員が作業中、休憩中のアルバイトに対し、『早くしろ!』と急かす、という体験談も聞いたことがありますね。名前を呼んでもらえず『バイト』呼びされることもあるそうで、まるで自分がモノのように扱われると感じる人もいるようです。
忙しい工場のラインに配置されると、怒号や罵声が飛び交うこともあるようで、雰囲気もギスギスしているのだとか。ただ殺気立っているのは、ラインが稼働しているときだけで、休憩中は優しい、というパターンもあります」(同)