■仮想現実空間はユートピアかディストピアか

 パテルさんは今回の自分の経験を「氷山の一角」と表現している。

「仮想現実のユーザーのほとんどは、個人的にまたは他人に向けられた人種差別、同性愛嫌悪、セクハラに遭遇したと報告しています。VR環境にいるとき、その人の脳はその体験が本物であると認識することが多く、興奮、恐怖、喜び、さらには仮想世界の臨場感などの本物の感情を感じることがあります」(パテルさん)

 パテルさんはVRを教育ツールとして使用する教育新興企業「Kabuni」の共同創設者であり、今回のショッキングな体験を経てもなお依然としてこのテクノロジーの熱心な支持者である。

「仮想環境内の課題とリスクについての意識を高めることが重要であるため、私は自分の話を共有し、より安全なメタバースを提唱し続けます。私の経験を共有することで、これらのスペースをより安全にすることを目的とした有意義な議論や行動に貢献したいと考えています」(パテルさん)

 パテルさんは、テクノロジーの力を過小評価しないことが重要だが、それがイノベーション、創造性、コミュニティ意識を育み、善なるものをもたらす力になり得ると信じていると語った。

「今日、私たちは、危害よりもプラスの影響をもたらすメタバースの基礎を確立する機会に恵まれた重要な岐路に立っています。この可能性を責任を持って活用することで、人間のつながりを強化し、学習を促進し、安全で楽しいユーザー エクスペリエンスを提供する仮想空間を作成できます」(パテルさん)

メタバースに入って“60秒で集団暴行”:そのトラウマは現実世界の暴行に似ている
(画像=画像は「Pixabay」より,『TOCANA』より 引用)

 非営利団体の「SumOfUs(サムオブアス)」は2022年5月、メタバース(Horizon Worlds)におけるヘイトスピーチと性的暴行の問題に関する報告書を作成し、プラットフォーム上で仮想痴漢や集団強姦が確認されたほか、性差別的、同性愛嫌悪的、人種差別的なコメントが見つかったことを報告している。

 この調査では子供にとってこのプラットフォームの利用が実に簡単であることが判明したが、ガイドラインに違反したユーザーに対して措置が講じられていないと言及している。

 パテルさんはイギリスで少女がVR内で暴行を受け、警察に通報した最近の事件を指摘し「VRの感情的および心理的影響は、とてもリアルで影響力のあるものになる可能性がある」と説明する。めざましい進歩を遂げる仮想空間がこれまでにないコミュニケーションの可能性を切り開くユートピアになるのか、それとも犯罪者や無法者の巣窟というディストピアになるのか、もちろんどちらの要素も含みつつ先へ進んでいくことになるとは思うが、現実の社会生活と同様のルールとモラルが求められていることは間違いない。

参考:「Daily Mail」ほか

文=仲田しんじ

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提供元・TOCANA

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