仮想空間で何が起きているのか――。ある女性はメタバースの仮想空間に入ってわずか60秒後に“集団暴行”の被害を受けたというのだ。
■メタバースに入って60秒で“集団暴行”
メタ社が提供するインターネット上の3次元仮想空間「メタバース」でユーザーは自分自身の分身であるアバターを介して自由に動き回り、他者と交流し、商品やサービスの売買など さまざまな活動を自在に行うことができる。
しかし自由であることは諸刃の剣でもある。メタバースを悪用したデータ侵害や虐待、性的暴行などが頻発するようになっているのだ。
心理療法士で新興企業の共同創設者であるニーナ・パテルさんは英紙「Daily Mail」のインタビューに応じ、メタバースの仮想空間の中で4人の男性アバターに「実質的に集団暴行」されたと明らかにし、そのトラウマは現実世界の暴行に似ていると述べている。この卑劣な犯罪者たちは仮想世界にいるために法やモラルに“縛られていない”と感じられたということだ。
襲撃者たちの身元はわかっていないが、4人全員が男性の声をしており、その暴行犯の1人は行為の後、彼女に「嫌なふりをするな!(本当は好きなんだろ!)」と暴言を吐いたという。この“悲惨な経験”は、メタバースに参加してからわずか60秒後に起こったという。
「彼らは私を執拗に嫌がらせし、その後、私のアバターに対する性的暴行としか言いようのない行為に進みました。彼らの行動は不快で不安なものでした」とパテルさんは語る。
メタバースはほかの多くのVR空間と同様に匿名性が保たれ厳しい規則やルールがないことから、性差別、同性愛嫌悪、人種差別が蔓延していると研究者らはかねてから指摘している。
「一部の人々は、現実世界のアイデンティティから切り離されていると感じ、何の影響も受けずに行動できると信じているため、VR設定でそのような攻撃的な行動を行う可能性があります」(パテルさん)
さらに進んで、反社会的行為が奨励される風土が醸成されかねないとの危惧もあるという。
「もう1つの潜在的な問題は、一部のVRプラットフォームでは、攻撃的で暴力的な行為が奨励され、報われていることです」(パテルさん)
メタの広報担当者は、友人以外が当人のアバターの4フィート以内に近づけないようにする安全ツールである「個人境界機能」があると説明している。
パテルさんの場合は仮想空間に入った直後にわずかの間フリーズしてしまい、この機能をすぐにアクティブにすることができなかったということだ。