■モンスターの生い立ち
シナガの父親はパーム油投資で成功した裕福な銀行家であった。ジャカルタ郊外の豪邸に暮らし、メイドやドライバーに囲まれて、長男の彼は何一つ不自由なく育てられた。インドネシアの大学で建築学を学んだのち、2007年、24歳の時に英マンチェスター大学の修士課程に進学した。父親の援助もあり、マンチェスターでも悠々自適な生活を送っていた。
一家揃って経験なクリスチャンであり、保守的な両親はシナガを結婚させようと何人かの女性とお見合いをさせたという。しかし彼が結婚することはなく、それどころかマンチェスターではゲイとして暮らしていた。シナガはたびたび帰郷しており、両親も頻繁にマンチェスターを訪れていたというが、家族が彼の性的指向に気づくことはなかった。なお、インドネシアの一部では同性愛はいまだに違法であり、事件が発覚した後は彼を死刑にすべきという声もあった。
2011年に修士号を取得した後もシナガは帰国することなく、今度はリーズ大学の博士課程へと進んだ。研究テーマは南アジアのゲイとバイセクシャルに関するものだったという。シナガはずっとイギリスで暮らしたいとの希望を家族に伝えている。
明るく社交的なシナガには多くのボーイフレンドがいたというが、それだけでは飽き足らなかったということだろうか。2015年元旦に最初の事件を起こして以降、彼は逮捕までの2年半、ハイペースで犯行を続けた。時にはSNSで「黒魔術の薬と秘密の毒を使ってストレートの男性とセックスしている」と自慢することもあったという。
息子の犯行が表沙汰になって以来、両親は彼を支援し続けており、母親は裁判にも出廷している。判決後、父親はBBCの取材に応じ、裁判の結果を受け入れると共に「これ以上この件について話したくない」と述べている。
シナガについて、担当検事は「もし捕まっていなければ今でも犯行を続けていただろう」と述べ、裁判官も「決して刑務所から釈放されるべきではない」と評している。一般に、性犯罪者は刑務所内で手荒い扱いを受けることが多いとされる。イギリスでもその傾向は同じようで、少なくとも子ども22人を性的暴行したかどで2016年に終身刑を宣告されたリチャード・ハックルは、2019年に刑務所内で刺殺されている。裁判ではふてぶてしい態度を見せたシナガであるが、刑務所では自らの罪の重さに向き合うことになるだろう。
参考:「The Guardian」「BBC」「Daily Mail」ほか
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提供元・TOCANA
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