ターゲットを絞った抗老化薬が開発できる
今回の研究により、老化が進んだキリフィッシュの体内でWntシグナルの異常が発生し、老化現象の代表的な症状の発生につながる可能性が示されました。
キリフィッシュと人間は同じ脊椎動物であり、細胞レベルでは大きな類似性を持っています。
研究者たちは、キリフィッシュの実験から得られたデータが、人間の老化現象の背後で何が起きているかを理解する手がかりになると期待しています。
例えば、キリフィッシュで見られた各種Wntシグナルの異常を逆転させるような小分子を開発できれば、将来的に抗老化薬として機能する可能性があります。
しかし、老化研究は単なる若返りの追求ではありません。
長寿の時代において、健康寿命を延ばすことが求められています。
つまり、ただ長生きするだけでなく、質の高い生活を送ることが目標です。
この観点から見ると、老化のメカニズムを理解し、その進行を遅らせる技術は、私たちの未来に大きな影響を与える可能性があります。
科学の進歩によって、かつて夢物語だったことが現実となりつつあります。
キリフィッシュの研究が示すように、意外なところから新たな発見が生まれることもあるのです。
参考文献
超速老化魚キリフィッシュを利用した可視化解析により、加齢に伴うWntシグナルの異常制御を捕捉(石谷研がNPJ Agingに発表)
元論文
Dynamics of Wnt/β-catenin reporter activity throughout whole life in a naturally short-lived vertebrate
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部