デジタル化の進展によるメディア環境の激変に対応するため、2つの新法が5月24日、英国で成立した。

「メディア法」と「デジタル市場・競争・消費者法」である。2日前にスナク英首相(当時)が「7月4日に総選挙を実施する」と突如発表したことを受け、次々と可決された(ちなみに、選挙では最大野党・労働党が勝利し、政権交代した)。

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動画配信巡り、支援

メディア法は、過去20年のメディア規制に関わる法規の中で最大規模の改革とされる。

BBCを含む主要放送局を指す「公共放送サービス(PSB)」が国際的な動画オンデマンド・サービス(VOD)と公平な条件で競うことができるようにする。

インターネットを通ってスマートテレビなどで動画を提供するサービス運営者に対し、PSBによる動画配信サービスを利用者が見つけやすく表示するよう求める。

英放送局には放送・通信業界の規制・監督機関の情報通信庁(オフコム)による放送規約を守る義務がある。一方、有料の米ネットフリックスやアマゾンプライム・ビデオなどを含むVODサービスは、BBCが展開する「BBCアイプレイヤー」を除くと、順守義務を課されていなかった。

今後、オフコムが定める「VOD規約」の順守が必須となる。また、コンテンツの80%に字幕、10%に解説の音声を付け、5%に手話通訳の映像を導入することなどが求められる。

オフコムによると、2014年から22年までに主要放送局による番組の視聴時間は30%減った。16-24歳の層では72%減少。また、ラジオ聴取者のうち放送時に聞く人は5年前は49%だったが、現在は32%に減っている。視聴者の選択肢が増える中、新法は英国のクリエーティブ経済の要となるPSBが継続して活躍できるよう法体制を整えた。