黒坂岳央です。

孫子は、「算多きは勝ち、算少なきは勝たず。況んや算無きに於いてをや」といった。端的に言えば「勝てない勝負はするな」といいたいのである。

これは仕事、いや人生そのものについても同じことが言える。自分が勝てない勝負はするべきではないのだ。

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一流校で落ちこぼれる辛さ

地元の学校では神童扱いされていた秀才が東京の一流校に行くと、落ちこぼれて自己肯定感がなくなるという話がある。自分の場合、親戚の子にまさにこれに当てはまる人物がいる。

彼の父親は一流大の博士号を持っており、彼自身がその優秀な遺伝子を花開かせて、幼い頃から勉強が得意だった。周囲からは「末は博士か大臣か」と言われ、そんな周囲の期待を裏切らず、地元のトップ校を出て誰もが知る一流大学の博士号を取得した。まさしく絵に書いたようなエリート街道を進んでいた彼を自分は尊敬しており、趣味も同じゲームだったので仲も良くよく話をした。彼は自分に大学や就職した研究機関での苦労を話してくれた。

確かに世間一般的に見てこの人物はエリートそのものである。しかし、彼いわく「大学にも職場にも、努力だけではまったく叶わない天才がいて自信を失うこともある」といっていた。高校では数学オリンピックに出場したり、プロの棋士を負かすクラスメートがいた。大学ではさらにレベルが上がり、本気でノーベル賞を取れるような研究者がいたりしたという話だ。

彼は留年せず、平均以上の論文を出して博士号を取得して現在も研究者として名前をあげている。落ちこぼれというより明らかに優秀なのだが、周囲にいる自分より上のレベルが遥か雲の上であることに劣等感を覚える瞬間はあると言っていた。実態は落ちこぼれでなくても、心情的に落ちこぼれ「感」があるということだ。一流の世界も大変なのだ。