● メキシコ国境からのアメリカ国内に侵入する危険分子の増加 中国からのスパイや工作員の疑いのある不法入国者の激増(これまでの8ヵ月間で中国人の不法入国は22,000人に達した。一昨年までの年間平均は2,000人に過ぎない) タジキスタンから不法入国した8人がイスラム過激派のテロ組織「イスラム国」(IS)のメンバーとわかり、ニューヨークなどで逮捕された(反米テロリストの不法入国の増加が予想される) 中南米からの犯罪前歴者の不法入国によるアメリカ国内での犯罪激増(ベネズエラの犯罪前歴者2人がテキサス州で12歳の少女を暴行し、殺害して逮捕された) ● ロシアの反米的な行動の激化 ウクライナ侵略での軍事攻撃の激化や拡大(7月8日のロシア軍によるキーウの病院などへの異例な大規模攻撃も米側の態度の弱化認識が原因とも考えられる) ロシアと北朝鮮との協力の強化(事実上の新軍事同盟によりロシアはウクライナでの戦闘に北朝鮮の直接間接の支援を得る) 中国との絆の確保(当面、ロシアと中国との合同軍事演習の増加やアメリカ批判の共同歩調の拡大が考えられる) ● 中国の反米的言動の増加 台湾への軍事的な威嚇や攻勢の拡大(アメリカによる阻止や反発が残りのバイデン政権下では少 なくなるとの計算が考えられる) アメリカ主導の国際秩序の破壊や侵食の動きの強化(中国は南シナ海や東シナ海での膨張を増し、東アジアでの勢力拡大を強めると目される) 中国内部での少数民族や民主活動家の弾圧の激化(バイデン政権は中国の国内弾圧への抗議もわりに明確だったが、残りの任期ではその勢いが衰えるという中国側の読みがある) ● 北朝鮮の対外姿勢の強硬化 ・米韓日三国への姿勢がより強硬かつ好戦的となる(ロシアとの新たな相互援助の条約に加えて、バイデン政権下の米国の対外対応も勢いが減るとの計算が考えられる) ・第七回目の核兵器実験の可能性(北朝鮮はトランプ政権初期の第六回目の核実験以来、自制を続けてきた形だが、バイデン政権の現況を好機とみて次の実験に踏み切る可能性がある) ● イランとその傘下のテロ組織の活動の高まり 独自の核兵器開発の推進(イランはトランプ前政権の強硬姿勢に直面して、核開発に慎重な態度をみせたが、それがまた前進へと変わる可能性がある) イランが支援するヒズボラ、ハマスなどのテロ組織のイスラエル攻撃が活発化(バイデン政権の弱体化という認識がイランの反米的行動を活発にする) ロシアのウクライナ侵略への軍事支援の増大(イランはすでにロシアへの直接の軍事支援をしているが、アメリカの後退という印象でその規模がさらに大きくなる)

以上の指摘は現段階では推測の部分も少なくないが、これからの反米勢力の動きについて米側の有力な専門家たちが起こりうる現象として、この種の具体的な警告を発している現実は重視すべきだろう。バイデン氏とトランプ氏の討論会への反響にはこんな国際的な深い読みがあることもまた知っておくべきだろう。

古森 義久(Komori Yoshihisa) 1963年、慶應義塾大学卒業後、毎日新聞入社。1972年から南ベトナムのサイゴン特派員。1975年、サイゴン支局長。1976年、ワシントン特派員。1987年、毎日新聞を退社し、産経新聞に入社。ロンドン支局長、ワシントン支局長、中国総局長、ワシントン駐在編集特別委員兼論説委員などを歴任。現在、JFSS顧問。産経新聞ワシントン駐在客員特派員。麗澤大学特別教授。著書に『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす』『米中激突と日本の針路』ほか多数。

編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2024年7月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。