小惑星探査から奇跡的な帰還を果たした「はやぶさ」、そしてその後継機「はやぶさ2」が小惑星のサンプルを地球に届けるなど日本のロケットや衛星の技術力の高さは皆さまご存じの通り。
そんな宇宙への入口とも言える場所が九州は鹿児島県にあります。それが大隅半島にある「JAXA内之浦宇宙空間観測所」です。はやぶさが打ち上げられたこの地は日本の宇宙開発のふるさととも言える地なのです。
ロケットの町、内之浦
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鹿児島県は大隅半島の東部に位置する肝付町。平成の大合併で高山町と内之浦町が一つになった肝付町ですが、旧内之浦町はロケットの町として知られていました。その理由としてはJAXAの内之浦宇宙空間観測所があること。町の中にはどこか宇宙を思わせるようなモノや宇宙っぽいお店の名前も多く、雰囲気を盛り上げてくれます。
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そして市街中心部から山の方を眺めると大きなパラボラアンテナが存在感を示す、内之浦宇宙空間観測所が見えています。国道448号を通って目指していくのですが、市街地から内之浦宇宙空間観測所へ向かう道は「内之浦惑星ロード」と名付けられています。
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途中5つある高架橋は「宇宙の架け橋」とされ、橋の親柱には内之浦から過去に打ち上げられた衛星やロケットの部品などをモチーフにしたオブジェも飾られています。
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高架橋は前部で5つあり、それぞれヴィーナスブリッジ(金星橋)、マーズブリッジ(火星橋)、ジュピターブリッジ(木星橋)、サターンブリッジ(土星橋)、ユーラナスブリッジ(天王星橋)の名が冠されています。
ヴィーナスブリッジ、マーズブリッジには衛星「さきがけ」が、ジュピターブリッジには衛星「おおすみ」、サターンブリッジには「M3A」モーター、ユーラナスブリッジには衛星「じきけん」のオブジェがそれぞれ置かれています。これらの橋を渡って内之浦宇宙空間観測所を目指していきます。
内之浦は異例の立地条件!?
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JAXA内之浦宇宙空間観測所はその名の通り宇宙空間観測の施設であり、そしてロケット打ち上げ施設でもあります。日本のロケット打ち上げといえば、規模の大きな種子島宇宙センターの名前の方が一般的には知られているかもしれませんが、実は日本初の人工衛星はここ内之浦から打ち上げられたのです。若干物々しい入口ゲートですが、門衛所にて受付を済ませれば気軽に見学することができますのでご安心を。
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この内之浦の地にロケット発射場を作ったのは日本の宇宙開発の父とされる糸川英夫博士。そのノウハウは現在のロケット開発にも生きているという、小型のペンシルロケット。全長20cmほどのロケットから始まった日本宇宙開発。それを主導した糸川博士は本格的なロケット発射場を作るべく各地を現地調査しました。
当時はロケット発射場は平地であるという選択肢しかなかったところを、糸川博士は一見ロケット発射場の条件に合わないこの地を訪れて閃いたそうです。「山肌を削ってその土砂で谷を埋めれば平地になる」と。そして高低差を利用して周辺施設も配置するなど、起伏ある土地を逆手にとったのです。これはその後、広い平地を持たない北欧の国々がロケット発射場を建設するモデルとなっています。
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内之浦宇宙空間観測所の入口ゲート付近には糸川博士の銅像とともに、ここ内之浦から打ち上げられた日本初の人工衛星「おおすみ」のモニュメントも置かれています。アメリカ、ソ連、フランスに次いで自力で衛星を打ち上げた国となった日本、その先人の苦労と偉業が静かに称えられているのです。