政策提言委員・金沢工業大学客員教授 藤谷 昌敏
報道によれば、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記が韓国との統一政策の放棄を宣言した。金正恩氏は2月15日の最高人民会議(国会に相当)で、「南北対話を担う祖国平和統一委員会など3組織の廃止」「同族の南北朝鮮は過去の遺物と宣言」「北朝鮮の主権が及ぶ領域を明記する憲法改正」を提案した。
北朝鮮の統一政策は、1972年金日成(キム・イルソン)主席と韓国の朴正熙(パク・チョンヒ)大統領が南北共同声明を取り交わしたことが始まりである。その後、1980年に至り、金日成は「高麗民主連邦共和国」構想を打ち出した。
この構想は、日本の賠償金を基とした漢江の奇跡で経済成長を続ける大韓民国(韓国)を武力・経済力などで圧倒することが不可能となり、不法傀儡と主張していた韓国の存在を認めざるを得なくなった金日成が北朝鮮の国家体制・独裁世襲を維持するために掲げたものだ。
この中では、政治面(連邦議会)で北朝鮮が明らかに優位な地位につくことになっており、また「先統一、後同一感回復」を唱えるものの、国家保安法撤廃、韓国内での共産主義政党の結成の容認、在韓米軍撤収などを求めていたため、韓国側には到底受け入れられるものではなかった。
金正恩が北朝鮮の最高権力者となって以来13年、ここに来て、なぜ北朝鮮は南北統一をあきらめたのだろうか。