例えば、国連のグテーレス事務総長は24日、安保理会合でハマスのテロを批判する一方、ガザ地区のパレスチナ人の困窮にも言及し、イスラエルによる56年間のガザ地区の統治を間接的ながらも批判した。グテーレス事務総長の発言を聞いたイスラエルの国連大使は激怒し、「事務総長は辞任すべきだ」と要求した。国連事務総長は自身の発言が大きな物議を醸し出したことを知って、「私の発言を誤って解釈している」と反論している。

欧州連合(EU)の加盟国が人道的停戦かイスラエル軍の報復攻撃続行かで意見が対立している中、ドイツのベアボック外相は国連安保理で、「テロリストと闘って壊滅してこそイスラエルとパレスチナに平和と安全がもたらされる。ハマスは依然、ロケット弾をイスラエルに向けて発射し続けている」と説明、イスラエル軍のガザ報復攻撃を全面的に支持している。ドイツのイスラエル支持は欧米諸国の中でも少々特出している、という印象すらあるほどだ。

ドイツ政府の無条件のイスラエル寄り政策は問題がないわけではない。ハマスの奇襲テロ事件後、ドイツ国内で反ユダヤ主義的言動が増加し、親パレスチナ派のデモ集会が頻繁に開かれ、一部、治安部隊と衝突している。

もちろん、反ユダヤ主義を標榜し、パレスチナを支援する国民は主にアラブ系、イスラム系の国民が多いが、それだけではない。極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)は移民反対、外国人排斥を掲げる一方、党指導部には反ユダヤ主義傾向が見られ、ガス室の存在を否定し、ホロコーストを否定する発言をする支持者もいるのだ(「独AfDは本当にネオナチ党か」2017年9月26日参考)。

そのAfDは最新の世論調査によると、「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)に次いで20%以上の支持率を得ている。すなわち、国民の5人に1人は反ユダヤ主義的傾向のある政党を支持しているという現実があるわけだ。ちなみに、世論調査ではショルツ連立政権の3党、社会民主党(SPD)、「緑の党」、「自由民主党」(FDP)は合わせても40%以下の支持率しかない。

パレスチナではイスラエルとハマスの戦いが続く一方、欧州ではドイツがパレスチナ紛争の第2フロントとなって親パレスチナ派と親イスラエル派が路上で衝突する、といった懸念すら予想され出したのだ。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年10月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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