業界トップであり続けるべきだという経営陣の意思

 そもそも同社のボーナス額について「高額」という認識は的を射ているのか。もしくは、諸条件を勘案すれば特段に高額とはいえないのか。

「三菱商事は前述したように日本企業のなかでは高額報酬として知られています。ただ三菱商事の場合は、その前提で考慮すべきポイントがあります。まず、直近の業績では、資源価格の下落が響いて対前年比で純利益が▲18%も減少しました。純利益額では三井物産に抜かれて業界2位に転落しました。にもかかわらず夏のボーナスが対前年比で6.9%増加している。つまり利益に対する報酬という考え方ではないのが、ひとつめのポイント。業績への成果報酬ではなく、人的資本の能力自体に報酬を支払っているわけです。

 次に従業員報酬を比較すると利益トップの三井物産よりも高いのです。これは長期安定的に競争優位を築くために、人に対する投資を意味する従業員報酬は、三菱商事が業界トップであり続けるべきだという経営陣の意思を感じます。

 そして3つめに前年比6.9%という金額水準です。政府の要請で経団連が5%以上の賃金増を掲げているなかで、日本企業平均を大きく上回る水準を打ち出してきました。夏のボーナス641万円というのは、もはや日本の大企業のなかでは圧倒的というべき金額です。人が事業を築き、これからも人が事業を築き続けることに対する自信の大きさを感じさせます」(鈴木氏)