■人間と野生動物の距離は縮まる一方
研究チームは1963年から2019年までの間に3150件以上の感染拡大を調査し、24カ国で75件の波及効果を特定した。
このデータベースには世界保健機関によって報告された伝染病、1963年以降に発生した50人以上の死者を出した感染拡大、および1918年と1957年のインフルエンザのパンデミックを含む歴史的に重要な出来事が含まれている。
この一連の感染拡大により1万7232人が死亡したのだが、そのうちの1万5771人はエボラに代表されるフィロウイルスによるもので、主にアフリカで発生した。
エボラ出血熱やマールブルグ病の原因となるウイルスは、オオコウモリやサルが保有しており、感染拡大はアフリカ諸国がメインだが、ヨーロッパやアメリカでも確認されている。
一方、SARSは、2003年の世界的大流行が抑制される前に、南北アメリカ、ヨーロッパ、アジアの20以上の国で感染が拡大したウイルスで、インドや東南アジア原産のコウモリやジャコウネコによって媒介された可能性が指摘されている。
ニパウイルスはオオコウモリによって伝播されたと考えられ、北東アフリカと東南アジアで発生が見られた。
ボリビア出血熱を引き起こすマチュポウイルスは、ボリビア北部に生息する大型のヴェスパーマウスを介して感染する。
研究者らによると、1963年から2019年にかけて感染拡大は毎年ほぼ5%ずつ増加し、死者数は9%ずつ増加している。つまり増加傾向が留まる気配を見せていないのだ。
「このような年間増加率が続けば、分析された病原体により、2050年には2020年に比べて波及事象の数が4倍、死亡者数が12倍になると予想される」と研究者らは言及している。
研究者らはまた、分析に病原体を含める厳格な基準と新型コロナウイルス感染症の除外により、この数字が過小評価されている可能性が高いと示唆した。
彼らは証拠の評価により、人獣共通感染症の波及によって引き起こされた最近の流行は「異常な集団やランダムなクラスターではなく」、「波及による流行が大規模かつより頻繁になっている数十年の傾向」に従っていることが示唆されていると述べ、歴史的傾向に基づいて「世界の健康に対する大きく増大するリスクに対処するために緊急の行動が必要である」と付け加えた。
最近の日本でクマやイノシシなど野生動物の住宅街での出没が問題になっていることからもわかるように、人間と野生動物の距離はどんどん縮まっており、それだけに人獣共通感染症のリスクも高まっている。“ポストコロナ”に胸を撫でおろしてばかりはいられそうもない。
参考:「Daily Star」、「Medical Xpress」ほか
文=仲田しんじ
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提供元・TOCANA
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