気分の上ではひとまず収束した“コロナ禍”だが、ホッとひと息ついてはいられないようだ。最新の研究では今後世界中で蔓延する4つの致命的なウイルスによって近い将来、コロナ禍の2020年の12倍の死者が出る恐れがあるというのだ――。
■致命的ウイルス感染死者数が“12倍”に増える近未来
世界を席巻した新型コロナウイルス(COVID-19)は、一説ではコウモリやセンザンコウを介して人間に感染したともいわれている。ウイルスの発生源として武漢の海鮮市場が疑われたこともまだ記憶に新しいのではないだろうか。
このように動物にも人間にも感染する感染症は「人獣共通感染症(zoonoses)」と呼ばれ、実態の把握が難しいだけに予期せぬ感染拡大を招くこともある危険なウイルスである。
「BMJ Global Health」に掲載された新しい研究では、4つの人獣共通感染症により、2050年には2020年の12倍の死者が出る可能性があるというショッキングな研究結果が報告されている。
この結果を受けてアメリカのバイオテクノロジー企業「ギンゴー・バイオワークス」の専門家らは、世界の公衆衛生に対するリスクに対処するための「緊急行動」を求めている。
波及効果(spillovers)とも呼ばれる人獣共通感染症による感染拡大は、気候変動や森林伐採により、将来的にさらに頻繁に起こる可能性があると研究者らは警告した。
コロナ禍の中で行われたこの研究は、過去60年間にわたる環境と人口の変化によってこれまでに以上に人獣共通感染症のパンデミックが起こりやすくなっていることを指摘しているのだ。具体的にはこれまでよりも感染死者数は“12倍”に増えるというのである。
研究チームの分析では、4つの特定のウイルス病原体の歴史的傾向を調べた。
その4つとは、エボラウイルスやマールブルグウイルスを含むフィロウイルス、SARSコロナウイルス1型、ニパウイルス、ボリビア出血熱を引き起こすマチュポウイルスである。ちなみに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は含まれていない。