厳しいバス業界の経営

 バス業界の経営は厳しい。バス会社の倒産・休廃業などが起きており、帝国データバンクの調査によると、20年度中に発生した観光バス運行事業者の倒産は14件、休廃業・解散は32件でともに過去最多。東京商工リサーチによると、22年上半期の「貸切バス業」倒産(負債1,000万円以上)は9件で、上半期としては1993年以降の30年間で最多件数を記録した。

 バス業界の運転手不足も深刻だ。21年10月、公共社団法人「日本バス協会」が会員を対象に実施した調査によると、回答した885社のうち56%もの会社が「運転手が不足している」と回答。背景にはドライバーの長時間労働の常態化と低賃金があった。22年に厚生労働省が発表した「賃金構造基本統計調査」によれば、「バス運転者」の平均年収は約399万円と、日本人の平均年収より低い。21年に労働局、労働基準監督署が監督指導を行ったバス業界103社の事業場の約6割で労働基準関係法令違反が認められた。

「バス運転手は以前から長時間拘束を強いられてきました。運転手は早朝便から夜間便まで長時間運転し続けなければいけないので、生活サイクルが崩れてしまうのです。そのうえ休日出勤もあるため不規則な出勤スケジュールとなったり、休日がなかなか取れず、福利厚生も十分ではなかったりとネガティブな面が目立つので、多くの人が敬遠して人手不足になるのでしょう。

 また賃金構造が全産業のなかで低い傾向にあることも大きな原因。バス業界は、重労働であるにもかかわらず賃金が安いため、若者や子どもを育てる壮年世代は入りづらい構造となっています。しかもアイドルタイムを休憩時間に設定して、その間の賃金を支払わないケースも少なくありません。実質的な拘束時間が長いわりに賃金が見合っていない職業といえるのです」(桜美林大学航空・マネジメント学群教授の戸崎肇氏/23年5月2日付け当サイト記事より)

 そこに「2024年問題」が重なる。24年4月からトラックドライバーやバス運転手など自動車運転者に働き方改革関連法に基づいた時間外労働の上限規制が適用され、時間外労働の上限が年間960時間未満に制限される。これにより広い領域でドライバー不足が発生しており、横浜市営バスは4月から367本の運行を削減し、小田急バスは3月に一部路線を廃止・減便。長野ではバス会社が一部路線の日曜運休に踏み切るといった事象が起きている。

「観光バスの運転手についていえば、コロナで仕事がほぼゼロになり、トラック運転手など他の職種に転職した人も多い。転職してから2~3年たって新しい仕事にも慣れ、低賃金のバス運転手よりは給料が良かったり、苦しい特に拾ってくれたという今の職場への恩もあったりして、なかなかバス運転手の仕事に戻ってきません。コロナが落ち着いて観光需要が回復したところにインバウンドが急増している一方で、運転手はまったく足りていないわけです。

 さらに時間外労働の上限規制が始まり、実際にドライバーの残業は減っており、結果的に人手不足という状態になっています。貸切型の観光バスは受注数を減らすなりして運転手の労働時間を比較的コントロールしやすいですが、路線バスのほうは大幅に路線を減らすなどしないと回らない状況で事態は深刻です」(観光バス会社関係者)

(文=Business Journal編集部、協力=鳥海高太朗/航空・旅行アナリスト)

提供元・Business Journal

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