「いま株を買うべきか?」への答えがバラバラな理由

株に投資する人も、大きく2種類に分かれる。

両者はまったく違う部類の投資者だ。

会社の内在価値に注目し、実際より低く評価されている会社の株を買っておき、成長するのを待つ長期投資を好む投資者がいる一方、群集心理に基づく株価のテクニカルな変動に目をつけて売買するトレーダーもいる。

同じ会社の株を売買するにも、その会社とともに仕事をするつもりの人もいれば、右から買って左に売り抜けるトレーダーもいる。

テクニカル分析により売買する人は、優秀なトレード・ツールと取引高だけに神経を使えばいいので、どんな会社で、その会社の将来はどうなるかなどには関心がないこともある。

そういうわけで、株式投資の初心者が誰かに「いま売るべきですか?」とか「いま買ってもいいですか?」と質問をしても、てんでばらばらの答えが返ってくるのだ。

尋ねるほうも自分がトレーダー(Trader)なのか、投資者(Investor)なのかを知るべきだし、答える人も質問者がトレーダーなのか、投資者なのかを知ってから答える必要がある。

質問するのはいい。

勉強ができれば必ず成功するというわけではないが、質問する人は成功する確率が高い。

ところが、投資の世界は別だ。

投資はお金に直接結びついているので、言葉ひとつによる決定が損益と深く関係している。

いちばんの問題は、答える人が答えを知らないことだ。

銀行員、証券会社の社員、会計士、プロの投資家、さらには有名なファンドマネージャーでさえ、本当の答えを知らない。

彼らが言えるのは自分たちの展望や噂だけだ。

新聞やテレビでよく見かける「投資プロの必殺技」「推薦銘柄」「狙い目」「投資のコツ」「値上がり予想銘柄」「実践投資法」「テクニカル分析による秘法」などの魅惑的な言葉は、すべて詐欺だと言っていい。

彼らはこうした方法によって自ら投資した結果、むしろこれを教える側に回ったほうが儲けになると知った人たちだ。

または、証券会社がスポンサーについた番組で、取引量を増やすために雇われた人たちだ。証券会社は、取引量さえ増えれば利益になるからだ。

預金通帳を公開すると言って偶然の成功を自慢したり、ネズミ講の頂点にいる者が高級車や通帳を見せびらかすのと変わらない。

本来、慎重な投資家であれば、自分の投資方法を自慢したり、通帳を人に見せたり、他人に投資を勧めたりしないものだ。

こうした行動は、周囲に思わぬ被害者を生み出すこともあるし、アドバイスを聞いて成功しても長続きせず、失敗すれば恨みを買うので、家族や知人に対しても慎重に接するしかない。

聞く前に尋ねるだけの資格を備えるべきだし、その資格を備えるために勉強していると、なぜ尋ねてはならないのかおのずとわかるようになる。

そうすれば、「不動産投資と株投資のどちらがいいのか」という質問がどれほど恥ずかしいものかもわかるだろう。

恥ずかしい質問であることがわかった瞬間、あなたは投資をする基本的な資格を備えたことになる。