『アメリカ消滅』はわれわれに警鐘を鳴らすとともに、歴史・経済を知ることの重要性を再度指摘する書である。
現代の碩学といえる著者であるが、本書ぐらい文章化に難渋したことはなかったという。それだけ現在のアメリカの状態・状況が悪いということだ。
イスラエル・ガザ戦争で多くの日本人にとってもっとも不可解なことは、なぜここまでアメリカが「イスラエル無条件全面擁護」なのかということだと思われる。一体なぜアメリカはここまで深くイスラエル支援にコミットし続けるのだろうか。この謎を解くためには、第二次世界大戦が終結した直後の世界とアメリカの政治情勢までさかのぼる必要がある。
アメリカ消滅 史上最強の腐敗国家
この謎を解明しようというのが本書の試みのひとつである。そして、イスラエル擁護とアメリカの荒廃は密接につながっているのだ。
冒頭では、現在のアメリカの病巣の原因である『ロビイング規制法』の成立した歴史的経緯が語られる。第二次世界大戦の終末期に、前任者であるフランクリン・デラノ・ルーズベルトの死によって思いがけなくアメリカ大統領に就任したハリー・トルーマンが「偉大」な業績を残そうとしてできた法律である。
トルーマンのもと、1946年に『ロビイング規制法』というのは名ばかりの『贈収賄奨励法』とも言える法律が制定された。
企業や業界団体などの特殊権益集団が直接議員に金を渡して、自分たちに有利な法律や制度を作らせようとすると犯罪になる。しかし、ロビイストを挟むことで合法的に金を議員に渡すことができるという趣旨の法律なのだ。
それまで巨大化への道を様々な形で封じられていた銀行業界に巨大銀行が生まれ、金融だけでなく、経済一般を大企業が牛耳るチャンスを産んでしまった。この『ロビング規制法』が制定されたことの意味は途方もなく大きい。この贈収賄症例法は、第二次世界大戦後のアメリカを公正向上による利益拡大を追求する国家からレントシーカー国家に変えてしまった。また、この法律はアメリカを長期戦争体制の永続戦争国家に変貌させてしまった。