スーパーマリオで統合失調症が改善した!
今回の実験では、健康な一般成人82名と統合失調症の患者95名を対象としました。
被験者はそれぞれ
・3Dの「スーパーマリオ64」をプレイする群
・2Dの「New スーパーマリオブラザーズ」をプレイする群
・電子書籍を読むだけの対照群(13冊から好きなものを1冊選ぶ)
の3つにランダムに振り当てられています。
被験者はこのグループ分けのもと、毎日30分間、計8週間にわたってマリオをプレイするか、電子書籍を読んでもらいました。
また実験前後には認知機能やメンタルヘルスの程度を評価し、磁気共鳴機能画像法(fMRI)を用いて、脳の接続性の変化も測定しています。
その結果、2Dと3Dの違いに関わらず、マリオをプレイした被験者は、電子書籍を読んだだけの被験者に比べて、持続的な注意力や集中力が有意に高まっていることが観察されました。
この認知機能の改善は、記憶や実行機能に関連する脳領域(海馬と前頭前野)の接続性の高まりと関係していたといいます。
さらに注目すべきことに、マリオをプレイした被験者たちは喜びの消失や意欲の低下といった「陰性症状」の減少も示していたのです。
このようにマリオを1日30分(8週間)プレイするだけで、統合失調症の認知機能とメンタルヘルスが改善できることがわかりました。
研究者はこの結果を受けて次のように指摘します。
「ゲームに特有の目標志向が、脳の神経ネットーワークの接続性を高めるとともに、患者の自己効力感(与えられたタスクをうまくこなし、予想される状況の変化に対処できるという自信)の向上につながった可能性があります」
コストや手間のかからない統合失調症の新たな治療アプローチとして「ゲームで遊ぶ」が役に立つかもしれません。
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参考文献
Video games boost cognitive function and mental health in schizophrenia patients
https://www.psypost.org/video-games-boost-cognitive-function-and-mental-health-in-schizophrenia-patients/
元論文
Videogame training increases clinical well-being, attention and hippocampal-prefrontal functional connectivity in patients with schizophrenia
https://doi.org/10.1038/s41398-024-02945-5
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部