人間によるタバコ栽培が、チンパンジーにコウモリの糞を食べるよう追い詰めていた
どうしてチンパンジーたちは、コウモリの糞を食べているのでしょうか。
確かに、コウモリの糞には、マグネシウムやリン、カリウムなどが豊富に含まれており、それを食べると動物たちは貴重なミネラルを得ることができます。
それでもチンパンジーたちは本来、コウモリの糞を積極的に食べるようなことはしません。
この点を解明するため、研究チームがチンパンジーたちの住処の周囲を調査したところ、人間たちが原因であることが分かりました。
ウガンダではタバコ栽培が盛んであり、育てたタバコを束ねて乾燥させるために、ヤシの一種である「Raphia farinifera」の葉を用います。
そしてタバコ農家が、このヤシの葉を大量に使用することで、2012年にはブドンゴの森からRaphia fariniferaがほとんど消えてしまいました。
これはチンパンジーたちに大打撃を与えました。
なぜならRaphia fariniferaには、動物たちに必須なミネラルが豊富に含まれており、彼らはこのヤシを食べることで栄養を得ていたからです。
結果としてチンパンジーや他の動物たちは、生きていくために、コウモリの糞を食べるしかなくなりました。
今回の研究結果は、パンデミックを引き起こすかもしれない新たな要素に目を向けたものとなりました。
研究チームも、「私たちの研究は、病気が人間に侵入する前に、病気について研究することの重要性を強調しています」と述べています。
そのうえで、今回判明した「人間の活動の結果が、回り回って、人間たちにパンデミックを引き起こすかもしれない」ことを考えると、なんとも複雑な気持ちになりますね。
参考文献
Study sheds new light on cross-species virus spillovers that can cause pandemics
Chimps are now eating disease-ridden bat feces as over-farming wipes out food sources in Africa… and experts warn it could start next pandemic
元論文
Selective deforestation and exposure of African wildlife to bat-borne viruses
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。