日本の場合、大量の移民、難民が殺到するケースは欧州諸国より少ない。その日本の埼玉県川口市でクルド人問題が一時期話題となった。法治国家で不法に入国し、違法行為をした場合、その移民・難民は、拘束され、ひいては国外追放される。川口市でそのようなケースが生じたとしても、それで「川口市民は外国人嫌い」とは普通いわないだろう。
バイデン氏の発言が失言なのは、移民受け入れ云々=外国人嫌いの尺度と考えたことだろう。その尺度で測れば、2015年に中東と北アフリカから100万人の難民が殺到し、その対応で苦慮したドイツやフランスなど大多数の欧州諸国は今日、国境を閉鎖、ないしは厳格な移民政策を実施している。バイデン氏の論理では欧州は「外国人嫌い」ということになる。
日本人は外国人嫌いではないと思う。ただ、自分と民族、文化が違う人間に対して、日本人は心を開くことがうまくない。
最後に、元大リーガーのイチロー選手の証を紹介する。イチロー氏は2019年3月21日、引退を表明したが、1時間20分を超える長時間の会見の中で、「アメリカでは僕は外国人ですから」と語ったというのだ。そして「外国人」の自分を発見することで、「人の心を配慮したり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れたんですよね」と説明していた(「イチロー『外国人となる意義』」2019年3月23日参考)。
「外国人であること」は決して快い状況ではない。「外国人」であるゆえに馬鹿にされ、中傷され、誤解された経験は「外国人」に一度でもなった人ならば体験しているだろう。もちろん、「外国人であること」が全てネガティブなわけではない。ポジティブなこともあるだろうが、「外国人」になった当初は残念ながら前者の体験の方が多い。ただ、「外国人であること」を味わっていくうちに、イチロー選手のように後者の体験が多く生まれ、人間として成長できる契機ともなるのだろう。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年5月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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