日本が同盟国と信頼してきた米国の大統領から「日本人は外国人嫌いだ」と指摘されたことに日本人はかなりショックを受けたようだ。まったく見当外れならば落胆することもないし、見過ごしてしまえばいいだけだ。
米国は大統領選挙戦中だ。選挙はどの国でもそうだが、政治家を狂わせる。政治家の言動は、有権者受けを狙ってどうしても極端になってしまう傾向がある。当方はバイデン氏の発言を聞いて、「バイデン氏は大丈夫だろうか」と心配になった。バイデン氏はこれまでも政治家の名前を間違えたり、過去と現在の違いが分からなくなったような発言が多くあったからだ。
日本人がバイデン氏の発言にショックと怒りすら感じたとすれば、バイデン氏が日本を中国やロシアと並べて「外国人嫌い」(外国人恐怖症=xenophobic)と表現したからだろう。もしバイデン氏が「日本人はフランス人やドイツ人のように外国人嫌いだ」と語っていれば、日本人は同氏の発言の是非は別として、少なくとも過剰に反応することがなかっただろう。インドは別として、バイデン氏はよりによって日本を独裁国家のロシアや中国と並べて、「外国人嫌い」と切り捨ててしまったのだ。日本人がショックを受け、怒るのはある意味で理解できる範囲だ。
日本外務省は3日までに、米政府に抗議を申し出たという。岸田文雄首相の訪米で高まってきた米国と日本両国間の友好的な雰囲気がバイデン氏の失言で消え失せてしまった感じさえする。
バイデン氏の「外国人嫌い」という表現は「移民受け入れが米国の経済成長を支えている」という文脈の中で飛び出したものだ。そうとすれば、外国からの移民の受け入れで厳格な規制を施行している国は外国人嫌いということになる。しかし、「外国人嫌い」という表現は、移民政策の云々ではなく、「外国人を意味なく嫌う」という国民性を意味してくる。だから、米国に対しては普段は大人しい日本政府も「それは違う」と抗議の一つでもしなければ怒りが収まらなかったわけだ。
移民受け入れ政策が厳格だから=それは即「外国人嫌い」とはいえない。不法入国者をルワンダに移送することを決定したスナク首相の英国は外国人嫌いのトップとなるだろう。しかし、英国は合法的な移民・難民には寛大だ。スナク首相もロンドン市のカーン市長も出自は外国人だ。英国人はその意味で「外国人嫌い」のカテゴリに入らないことは明らかだ。