7月8日、ロシア軍によるウクライナ各地への攻撃が発生した。死者は46人、負傷者は190人以上に上った。報道によれば、その内訳として、キーウで32人の死者が出たことが目立つ。中でもキーウ小児病院がミサイル攻撃を受け、多数の死傷者が出る凄惨な状況となった。

ミサイルが着弾した現場のようす ゼレンスキー大統領Fbより(編集部)

小児病院への攻撃については、ロシア政府報道官は、ウクライナの防空システムのミサイルの落下によるものだと説明した。解析対象となる情報が限られている中で、SNS上では様々な見解が見られるが、今のところロシア軍の攻撃によるものだという見解のほうが、信憑性が高いようである。

仮にロシアの攻撃だったとして、まだ理論上は、誤射の可能性はある。ただしあまり確率は高くないと思われる。8日に、オフマディト小児科病院とあわせて、アドニス総合病院などの施設も攻撃されている。誤射が続いたとは考えにくい。

そうだとすると、ロシアの意図は何か。

パレスチナのガザでは、ほぼ全ての既存の病院が破壊されて機能不全に陥っている。すでに4万人以上の犠牲者を出しながら9カ月間にわたって占領地で苛烈な軍事作戦が続けられている。イスラエルの場合には、占領地からガザの住民を追い出すことに巨大な利益を持っており、民政施設に対する攻撃の利益も明白である。イスラエルは、人道援助にあたるUNRWA(国際連合パレスチナ難民救済事業機関)への資金提供の停止を各国に働きかけただけでは足りず、現在進行形でUNRWA本部を攻撃して破壊している最中だ。200万人のガザ市民が深刻な飢餓の危機に陥っている。イスラエルは、この状況を完全に起こっていないことだとまでは主張せず、むしろただハマス掃討に必要な作戦の一環だ、と主張している。

これに対して、ロシアがキーウの病院を攻撃してみたところで、イスラエル軍がガザ地区で行っているような甚大で広範な効果までは引き起こせない。過去のプーチン大統領の行動と比較して、たとえばチェンチェンやシリア各地での殲滅作戦のようなものと比べて、現在そのようなことが行えるほどの航空優勢はない。民生施設を狙い撃ちすることによって、軍事的効果は乏しい攻撃で、戦争犯罪を積み重ねている。何のために行うのか。