そのほか、ヘルト・ウィルダース党首が率いるオランダの極右政党「自由党」(PVV)、デンマークの極右党「人民党」、ポルトガルの極右ポピュリスト政党「チェガ」、ベルギーの極右「ヴラームス・ベラング」も新会派への参加を望んでいる。なお、RNはPfEの中で最も多くの議員(30議員)を擁していることもあって、新会派では主導的役割を果たす予定だ。
一方、ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)はRNとの間で論争があって、IDから追放された経緯がある。AfDのアリス・ワイデル共同党首の広報担当者はドイツのニュース専門局ntvに対し、「この時点でAfDが新会派に属することはできないが、AfDにとって他の政党との協力の新しい可能性を開くものとして新会派創設を歓迎する。欧州議会ではECR(欧州保守改革党)やIDの会派が存在するが、他の選択肢の誕生は喜ばしい」と述べ、AfDが中期的には新会派に所属する可能性を排除しなかった。
会派にはその規模に基づいて一定の活動資金が支給されるほか、大きな会派に所属する議員は議会でのスピーチの持ち時間が増えるなどの特典がある。PfEが欧州議会で無視できない会派となったことで、欧州議会の政策決定にもこれまで以上に影響を与えることになる。
ちなみに、欧州連合(EU)の今年下半期議長国ハンガリーのオルバン首相は2日、ウクライナの首都キーウを訪問し、ゼレンスキー大統領と会見した。オルバン首相にとって、ウクライナ訪問は2022年2月のロシア軍のウクライナ侵攻後初めて。オルバン首相はEU加盟国の中でもロシアのプーチン大統領との友好関係を有し、欧米諸国のウクライナへの武器供与には強く反対してきた。同首相は5日、モスクワに飛び、プーチン大統領と会談し、8日には北京で習近平国家主席と会談し、ウクライナの早期停戦の実現について話し合っている。
オルバン首相のキーウ、モスクワ、北京訪問について、EU側が事前に相談を受けていないこともあってブリュッセルでは批判の声が高まっている。曰く、「オルバン首相はEU代表ではない。彼はEUの代表としてプーチン氏や習近平国家主席と会談する権限を有していない」と指摘、オルバン首相の権限逸脱を批判している。ブリュッセル側の懸念は理解できる。プーチン大統領はオルバン首相をEU代表者と受け取り、ウクライナの停戦問題でロシアのプロパガンダを広げているからだ。
欧州の極右政党にはロシアとの友好関係を持つ指導者が多い。それだけに、欧州議会でPfEがロシアの利益を代弁する言動に出てくる可能性が排除できない。PfEの欧州議会での言動に警戒が必要だろう。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年7月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。