レガシーは、企業経営においては、負の遺産という表現のもとで、捨て去られるべき古い事業を指すことが多い。今や、社会構造や技術条件の変化は、ディスラプティブ、即ち、断絶的、不連続的、あるいは破壊的とすら呼ばれるくらいだから、常に、どこかの場所で何らかの新旧交代が生じて、何かが必ずレガシーになっているわけである。
かつて、日本には世界有数の造船業があったが、大手の事業者は、いわゆる総合重工や総合重機と呼ばれる複合事業体の巨大企業であった。今では、造船業は、中国や韓国等の企業に押されるなかで、総合重工にとっては、典型的なレガシーとなり、各社の造船部門の再編が進み始めたわけだが、再編の中核になっているのは、かつての中堅であり、総合重工とは全く異なった経営風土をもつ専業の造船会社なのである。