2024年5月8日から、太陽は巨大黒点からXクラスフレアを連発。地球を襲った強い太陽風は激しい磁気嵐を起こし、世界中で低緯度オーロラ観測フィーバーが巻き起こりました。

恒星では太陽の100倍、1000倍という巨大な磁気嵐を引き起こすスーパーフレアが観測されていますが、天文学者によりそれは太陽でも起きる可能性が指摘されています。

もしスーパーフレア級の太陽フレアが地球を直撃すると現代文明は突然終焉を迎えます

衛星は落ち、通信は途絶え、電気系統は全て使えなくなることにより文明は一時的に18世紀レベルまで後退するとも言われています。

今回はそんな、SF映画の導入にされそうな大規模な太陽フレアの可能性について解説していきます。

目次

  • 強い太陽フレアは激しい磁気嵐を起こす
  • 屋久島の杉はスーパーフレア級の太陽フレアを記憶していた?

強い太陽フレアは激しい磁気嵐を起こす

太陽は自身の力で光る恒星で、全体がガスでできています。その大きさは139万2700 km、地球の約100倍あり、その大きさのため内部では核融合が起きており表面温度は約6000℃という高温です。

太陽の黒点という言葉を聞いたことがあると思います。黒点というのは太陽の表面に見られるシミのような黒い点のことで、太陽の表面温度よりも低く、約4000℃です。

それでも大変な高温ですが、太陽の表面温度よりもぐっと低いので、その部分は黒く見えるのです。

磁場により結合した太陽大気の構造。コロナ:高温の上層大気。遷移層:彩層とその上空のコロナをつなぐ薄い大気構造。彩層:光球の上空2000 kmくらいまでの大気構造。光球:可視光で見える太陽の表面。
磁場により結合した太陽大気の構造。コロナ:高温の上層大気。遷移層:彩層とその上空のコロナをつなぐ薄い大気構造。彩層:光球の上空2000 kmくらいまでの大気構造。光球:可視光で見える太陽の表面。 / Credit:太陽画像:国立天文台/JAXA、NASA

黒点は太陽内部で作られた磁場です。その大きさは大きいもので数万kmにも及ぶことがあります。また、黒点の数が多く現れる時期が観測されており、平均して11年周期で太陽活動が活発になり、黒点が増えることがわかっています。

太陽が作る磁場により、黒点の数や形は刻々と変わっていきます。磁場なのでN極とS極がありますが、磁力線がどのような出方をするのかは成り行きまかせ。そのため、磁力線同士が近づきすぎてたびたび大爆発を起こします

この大爆発を「太陽フレア」と呼びます。

太陽フレアは太陽の周囲全体に太陽大気のガス(=プラズマ)を噴出します。強い太陽フレアが地球に向かってきた場合、激しい磁気嵐となって通信障害やブラックアウトと呼ばれる大規模停電などの被害を及ぼします。

1989年には激しい磁気嵐のためカナダのケベック州でブラックアウトが9時間続きました。また、2022年にはスペースX社が2月上旬に打ち上げたスターリンク衛星49基のうち約40基が機能停止に陥り、使用不能になっています。

太陽は地球にこのような被害を及ぼすことがあるため、研究者が毎日注意深く観測を行い、太陽の謎を解き明かす研究を行うとともに、災害につながる情報は宇宙天気予報で公開しています。

2024年3月1日には、提案から5年以上の月日をかけた「高感度太陽紫外線分光観測衛星」、略称「SOLAR-C」というプロジェクトが発足、欧米の宇宙機関の支援のもと、SOLAR-C望遠鏡の開発が進められています。

地磁気の現状を現したグラフ。このグラフからは落ち着いた状態が読み取れる。棒グラフが紫色の文字Severe stomeの高さまで伸びると強い磁気嵐が起きていることを示す。
地磁気の現状を現したグラフ。このグラフからは落ち着いた状態が読み取れる。棒グラフが紫色の文字Severe stomeの高さまで伸びると強い磁気嵐が起きていることを示す。 / Credit:国立研究開発法人 情報通信研究機構 電磁波研究所 宇宙環境研究室/気象庁地磁気観測所のK指数(柿岡)