iDeCo(イデコ)の口座を作ると、その金融機関とは少なくとも10年以上の付き合いになる。金融機関選びは慎重に行いたいが、どのような点を比較すればよいのか。ここでは「手数料」「取扱商品」「付加価値のあるサービス」の3つに絞って解説したい。
iDeCo(イデコ)の手数料を比較……口座管理手数料で違いが出る
iDeCoには初期費用と月額手数料がかかる。加入時の初期費用2,777円はどこでも共通(別途加入手数料が必要な金融機関もある)だが、月額手数料は金融機関によって異なる。月額手数料は以下の3つから成る。※以下、手数料は全て税込
- 国民年金基金連合会に支払う「収納手数料」……月額103円(共通)
- 信託銀行に支払う「事務委託手数料」……月額64円(ほぼ共通)
運営管理機関に支払う「口座管理手数料」……金融機関による
口座管理手数料を無料に設定している金融機関でも、収納手数料と事務委託手数料で最低でも月額167円はかかる。ネット証券の多くでは口座管理手数料がかからず、月額手数料は167円で済む。みずほ銀行やりそな銀行など一部の都市銀行、大和証券や野村證券の大手証券、損保ジャパンなどの保険会社でも条件付きで口座管理手数料が無料だ。
一方で月額手数料が500円を超える金融機関も多い。月額数百円ほどの違いでも、長期間となると結構な金額になる。とある地方銀行の月額手数料は617円で、最安である167円の場合と比べると10年間で5万4,000円も多く支払うことになる(2019年6月時点)。
初期費用と月額手数料以外では、受け取り時にかかる費用と金融機関変更時にかかる費用がある。受け取り時の振込みのたびに432円かかるのはほぼ共通だ。他社にiDeCo口座を移す手数料は無料のケースが多いが、金融機関によっては4,320円程度かかることがあることも覚えておこう。
iDeCo(イデコ)の取扱商品を比較……取扱本数と金融機関が得意とする商品タイプをチェック
どのような商品を扱っているかで選ぶことも重要だ。ポイントとなるのは取扱本数と、その金融機関が得意とする商品タイプの見極めだ。
iDeCo(イデコ)の取扱商品数が多い金融機関
商品数が30以上あるのはSBI証券(87本)、岡三証券(41本)、スルガ銀行(33本)、ゆうちょ銀行(31本)、楽天証券(32本)で、それ以外は30本に満たない(※2019年6月時点)。取扱本数にこだわりたければこれらの金融機関が有力な選択肢だ。
ただし、取扱商品数の多いことが必ずしも有利に働かない点をおさえておく必要がある。特に初心者にとっては商品選択が大きなストレスになりがちだ。厚労省の2017年の調査では、選択できる商品数が36本を超えると投資家は銘柄を自分で選ばなくなる傾向があったそうだ。これを受け、iDeCo取扱商品の上限を35商品に引き下げられ、2023年4月末までに各社も商品数を段階的に絞る流れにある。
取扱商品数は少なければいいというわけでもない。元本確保型・パッシブ型・アクティブ型・バランス型など種類ごとに満遍なく選択肢があり、少なくとも合計12本程度は取り扱いがあるのが望ましいだろう。
iDeCo(イデコ)で元本確保型・パッシブ型の商品が多い金融機関
金融機関が扱っている商品に、どのようなリスク度合いの商品が多いかにも注目したい。取扱商品数が同じでも、金融機関によって全体的にアクティブ寄りだったりパッシブ寄りだったりするからだ。
定期預金などの元本確保型商品や、比較的リスクの低いインデックス投信などのパッシブ型商品を多く扱っているのは、ゆうちょ銀行、SBI証券、野村證券などだ。ゆうちょ銀行にいたっては定期預貯金だけで8本もある。野村證券はアクティブの2倍近くのパッシブ商品を扱っており、安定志向なのが分かる。
iDeCo(イデコ)でアクティブ型の商品が多い金融機関
パッシブ型よりもアクティブ型の商品の取り扱いが多いのは、岡三証券、楽天証券などだ。アクティブ型は大きなリターンが望める半面、手数料とリスクが高くなる傾向があるため、信託報酬や運用実績を読みこなすスキルを磨きたいところだ。
iDeCo(イデコ)のサービスを比較……付加価値のあるサービスやサポートで選ぶ
手数料と商品数のほか、付加価値のあるサービスで差別化を図る取り組みもある。
窓口での相談や電話サポートが充実しているとiDeCo(イデコ)初心者でも安心
三菱UFJ銀行および三菱UFJ信託銀行の電話サポートは、12月31日~1月3日以外は土日祝含め営業している。営業時間も9時~20時と、主に17時までになっている他社と比べて長い。イオン銀行はイオン店舗内の窓口で365日対面の相談ができるのが特徴的だ。iDeCoは手続きや利用条件が複雑なので、いつでも問い合わせができると安心感がある。
ポイントが貯まるシステムや各種の割引制度を用意している金融機関もある
「auのiDeCo」を取り扱うKDDIアセットマネジメントでは、残高に応じてauポイントが貯まるサービスを展開している。たとえばauユーザーがauスマート・プライムのコースを選択し月間平均保有残高100万円の場合、年間1,000ポイント貯まる。日本生命はJTBと提携しており、iDeCo利用者は旅行やレジャー代、スポーツクラブ料金などが会員価格で利用できる特典がある。
iDeCo(イデコ)加入者に生活支援サービスを提供している保険会社もある
第一生命保険では、iDeCo加入者に健康・医療・介護に関する電話相談サービスを無料で提供している。東京海上日動火災保険の場合、救急専門医の医療相談や、夜間・休日または外出先での最寄りの医療機関を案内してくれるサポートが受けられる。いずれも本業の得意分野を活かしたサービスと言えるだろう。
iDeCo(イデコ)の金融機関はなじみ深さで選ぶのも手
手数料、取扱商品、付加サービスはiDeCoの金融機関を選ぶ上で重要な要素だが、今の生活に照らし合わせて選ぶのも良い。たとえば楽天ユーザーなら楽天証券で運用したほうが何かと便利だろう。ライフスタイルに合わせて扱いやすいところを選ぶのもひとつの手だ。
文・篠田わかな(フリーライター、ファイナンシャル・プランナー)
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