「戦争研究所」所長はKimberly Kaganという人物だが、その夫のFrederick Kaganが、主観的な意見を交えた論評を、随時発表している。

彼は、イラク戦争時に侵略推進派として活躍した「ネオコン」代表論者Robert Kaganの弟である。彼らの父のDonald Kaganがネオコンの思想的傾向を持つ人物であった。これらの人物は、単に親族関係にあるだけでなく、しばしば統一的な意見を表明する連盟記事に名を連ね、時々の政権の政策に影響を与えようとしてきた。

REBUILDING AMERICA’S DEFENSES Strategy, Forces and Resources For a New Century

「ネオコン」系機関の意見が日本の主流派メディアで、いわば「安心できる」ソースとみなされている一方、少しでも欧米諸国のスタンスに批判的な言論人は、全て「ロシア寄り」とみなされて、危険視される傾向が続いている。

親ウクライナ・親イスラエルの思想傾向を隠すことがない「Visegrád 24」などが、自民党議員などによって安心できる情報ソースとして信奉され、日本の中東政策も影響されてしまっているのも、無関係な現象ではないだろう。

残念ながら学者が構成する言論界でも、議論の深さではなく、「親露派」か「親米派」かのレッテル貼りとグループ分けで、相互糾弾と相互信頼を積み上げていく悪弊が、根深く広がっている。

地道に、情報の精度を議論しあうことを怠らないようにしないと、やがて自壊が始まるだろう。

世界的な思想傾向としては、欧米諸国の主流派は、勢いを失っている。欧州においてすら、一枚岩ではない。ハンガリーのオルバン首相が「親露派」とみなされて、EU・NATOの主流派の非難を浴びている。だがその他の中欧諸国・南欧諸国には、ハンガリーの立場に理解を示す勢力が存在する。「極右」「ポピュリスト」などと呼ばれているフランスの国民同盟も、「親露」とみなされている。これらの勢力は、主流派に取って代わるほどではないが、もはや排斥することが不可能な勢いは確保している。

この状況でアメリカにトランプ「親露派」政権が登場したら、従来の主流派の間には、大混乱が広がると思われる。

その日が刻一刻と近づいている。