黒坂岳央です。

時代の変化が速い現代、「リスクを取らないリスク」は誰の目にも明らかになってきた。

一昔前はやって失敗する人がいたら「欲張りでバカなやつだ。強欲を出さず、長いものには巻かれろ」と言われてしまっていた。しかし、今やリスクを取らない人はどれだけ大船にいてもその船に乗ったまま沈んでいく運命が待っている。なぜならリスクを取らないということは変化を拒むことと同義であり、変化できないものは必ず淘汰される運命にあるからだ。

リスクを取る、ということについての最大の誤解は「頭の良さが必要」と考えられていることだ。むしろ、ベテランやキャリア豊富な人ほど、旧態依然のやり方に固執して「いかに変化せずに済むか?」ということに頭を使っているフシすらある。

リスクテイクは技術であり、知能指数ではない。コツをシェアしたい。

champpixs/iStock

最初に小さく始める

リスクを取るのが下手な人は「やるなら100点を目指して抜本改革だ!」と考えがちだが、これは間違いだ。変化が速い現代に100点満点は存在しない。それを目指すと永遠に始められない。だからbestではなくbetterを目指す意識が必要なのである。

そして一気に何もかも変えるのではなく、小さくテストするのだ。悪い例は国の政策や税制改正である。「ドカンと大改革で日本中が大混乱!」ということをずっと繰り返している。たとえば有料レジ袋やインボイス制度も「愚策」として多くの問題が指摘され、特にインボイスについては修正に次ぐ修正によって、もはや現場の税務調査官や税理士でさえ何が正しいかよくわからず混乱状態になっている。完成度の低い政策の結果、日本全国の貴重な労働リソースを付加価値のないムダな作業に使わせてしまっている。

政策レベルのプロジェクトとなれば、確かにテスト運用するのは現実的に難しいかもしれない。だが、ビジネスならテスト運用は可能なはずだ。たとえば新しいシステムの導入については、ある日いきなりドカンと変更するのではなく、しばらく並行稼働して改善案を拾いつつ、完成度を十分高めてから猶予期間を設けて変更する。いきなり現行運用を完全に捨てて、まるっきり新しく変化しようとするから抵抗勢力ができる。何でも最初は小さく始めれば良いのだ。