「今日はこんなことがありました」 「昨日、私は失敗してしまって」

「場を和ませようとして自分の話を切り出してしまう感覚はよくわかりますが、相手が話しやすい質問をしたほうが、 相手が会話の主役になれます。雑談は、あくまでもお客さまの興味を汲み取って、サービスにいかしていくためのキッカケに過ぎません」(加藤さん)

空の階級論とは

座席コンフィギュレーション(configuration)は、航空機の客室や座席配列のことを指すが、乗客の人格やアイデンティティーを計るための物差しでは無い。日本では、いつの間にか、CAと乗客との間に生じた、歪曲された特殊な空間が一層の勘違いを生じさせているようにも感じている。ファーストクラス伝説などは最たるものだろう。

よく知られた話だが、イギリスのキャメロン元首相は、公務はレガシーを使いプライベートはLCCを使用する。キャメロン元首相はイギリス政府の長、元連合王国内閣総理大臣のエグゼクティブである。華やかさばかりが先行するCAの仕事だが、その実態を理解すべきではないか。

CA出身のマナー講師は、ファーストクラスの価値をことさらにプッシュするが、乗客としての優劣などは存在しない。また、本物のエグゼクティブであれば、ファーストクラスに乗って、これ見よがしに自慢することなど有り得ない。

人々の安全を守り、ハイレベルなサービスを提供する航空業界のノウハウは奥が深いようである。気付きの多い一冊として紹介しておきたい。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

2年振りに22冊目の本を出版しました。

「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)